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eラーニングツールを導入しても使われない会社に共通する3つのパターン


はじめに


前回の記事では、社内研修が形骸化する本質的な原因として「教育設計の欠如」を取り上げた。「何を教えるか(WHAT)」が設計されないまま、「どう届けるか(HOW)」への投資だけが繰り返されている、という構造的な問題だ。

今回はその「HOW」の代表格であるeラーニングツールに焦点を当てる。導入したのに使われない。コンテンツはあるのに受講率が上がらない。そういった状況に陥る会社には、共通する3つのパターンがある。


そもそも「使われない」とはどういう状態か


eラーニングツールが「使われない」状態にはいくつかのレベルがある。

ログインすらされない、コンテンツを開いても途中で離脱する、受講は完了するが業務に反映されない──これらはすべて「使われていない」という意味では同じだが、原因はそれぞれ異なる。

問題を正確に解決するには、「どのレベルで使われていないのか」を診断することが最初の一歩だ。そしてその診断をすると、ほぼ必ずといっていいほど、以下の3つのどれかに行き着く。



パターン1|「コンテンツ不在型」──ツールはあるが、中身がない


最も多いのが、このパターンだ。


eラーニングツールを契約し、管理画面を設定し、社員にアカウントを配布した。ところが、実際に配信できるコンテンツがない。あるいは、外部から購入したコンテンツはあるが、自社の業務・商品・文化に合っていないため、誰も受講する理由を見いだせない。

このパターンに陥る理由は明確だ。「ツールを導入すること」がゴールになってしまい、「何を学ばせるか」の設計が後回しになっている。


eラーニングツールは器に過ぎない。器だけを用意しても、中身がなければ誰も使わない。

チェックポイント:導入前に「配信するコンテンツのリスト」が具体的に存在していたか。なければ、このパターンに該当する可能性が高い。



パターン2|「強制受講型」──やらされ感が定着を妨げる


コンテンツはある。受講率の数字も悪くない。しかし現場が変わらない、知識が定着しない


──このパターンに多いのが、受講が「業務命令」として課されている状態だ。


コンプライアンス研修や安全衛生研修のように、受講記録そのものに意味がある場合は別として、「スキル習得」や「業務改善」を目的とした研修においては、強制受講は逆効果になりやすい。


受講者は最短で修了するための行動をとる。動画は早送りし、クイズは何度でも再挑戦できる設計であれば答えを探しながら回答する。形式上は「完了」しているが、学習は起きていない。


このパターンの根本原因は、「受講者にとっての学ぶ理由」が設計されていないことだ。何のために、何を学ぶのか。その文脈が伝わらないまま、コンテンツだけが配信されている。


チェックポイント:受講者は「このコースを受けると、自分の仕事のどこが変わるか」を説明できるか。説明できなければ、このパターンに該当する可能性が高い。



パターン3|「管理者負荷型」──運用が重くなり、続かない


導入直後は動いていた。担当者が熱心にコンテンツを作り、受講促進のメールを送り、進捗を確認していた。しかし半年後、1年後、担当者の異動や業務過多をきっかけにシステムだけが残り、誰も管理しなくなった。

このパターンは、eラーニングの「運用コスト」が当初の想定より大幅に高かったことで起きる。


コンテンツを作るためには、素材の収集・構成の設計・スライドの制作・クイズの作成・アップロードという一連の工程が必要になる。更新のたびにこのサイクルが発生する。専任担当者がいない中小企業では、これを継続することは現実的に難しい。


ツールの問題ではなく、運用設計の問題だ。「誰が・どれくらいの工数で・どのタイミングで更新するか」が設計されていなければ、どんなに優れたツールも止まる。

チェックポイント:コンテンツの初回作成にかかった時間を把握しているか。その工数で、月次・四半期ごとの更新が継続できるか。



ツール選定の前に見直すべき3つの問い


3つのパターンを整理すると、eラーニングツールが機能しない原因はツール自体にあるのではなく、ツールの「前段」にあることがわかる。


ツールを選定・変更する前に、次の3つの問いに答えられるかを確認してほしい。


問い1:配信するコンテンツは、誰が・どうやって作るか ツールの機能よりも先に答えるべき問いだ。外部購入か、内製か。内製であれば、誰が何時間かけて作るのか。この答えがないまま、ツールの比較検討をしても意味がない。


問い2:受講者は「なぜ学ぶか」を理解しているか コンテンツを配信する前に、「このコースを受けると、あなたの仕事のこの部分が変わる」という文脈を設計できているか。受講者にとっての学ぶ意味が言語化されているかどうかが、定着率を大きく左右する。


問い3:更新・運用を誰が担うか、その工数は現実的か 初回の導入だけでなく、半年後・1年後の運用まで見据えた設計ができているか。担当者が変わっても継続できる仕組みになっているか。



「コンテンツ制作の工数」が、最大のボトルネック


3つのパターンと3つの問いを見ていくと、共通して浮かび上がるのが「コンテンツ制作の工数」という問題だ。


中身がなければツールは動かない。受講者に文脈を届けるには、それを組み込んだコンテンツが必要だ。更新が続かない最大の理由も、コンテンツを作り続けることへの負荷だ。

eラーニングはあれど、やはり内容の習得は本人任せが前提であり、また既製品であるため自分ごととしての学びに繋がっていない、という課題が実際の現場から聞こえてきた。本当に必要なのは、自社の業務・文化・言葉に即したコンテンツで、基礎から体系的に習得できる仕組みだ。

既製品のeラーニングコンテンツが「使われない」のは、受講者の意欲の問題ではない。自分たちの仕事と結びついていないから、学ぶ意味を感じられないのだ。


まとめ


eラーニングツールが使われない会社に共通する3つのパターンは以下の通りだ。


パターン1「コンテンツ不在型」:ツールはあるが配信する中身がない。


パターン2「強制受講型」:受講者に学ぶ理由が伝わっておらず、形式だけの完了になっている。


パターン3「管理者負荷型」:運用が重くなり、担当者が変わると止まってしまう。


いずれも、ツール自体の問題ではない。ツールの前段にある「設計」と「コンテンツ」の問題だ。


ツールを変える前に、3つの問いに答えてみてほしい。その答えが出たとき、本当に必要なものが見えてくる。



次回予告


次回は「人的資本経営元年と言われて2年、中小企業の研修はなぜ変わらないのか」を取り上げる。制度・言葉だけが先行し、現場が変わらない構造的な理由を考える。

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