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「伝わった」のに「できるようにならない」のはなぜか──情報伝達と教育設計のあいだ


以前の記事「伝わる情報伝達とは?」では、情報伝達の本質について詳しく取り上げました。対面営業、メール、ホームページ、セミナー。それぞれの手段の特性を理解し、対話的なアプローチを重ねることで、情報はより深く、効果的に伝わる。そして、情報伝達の最終的なゴールは、受け手が行動を起こすことだと結びました。



この結論には、今でも完全に同意します。しかし研修や人材育成の現場に身を置いていると、もう一歩踏み込んで考えたくなる場面に出会います。それは、**「伝わった」のに「できるようにならない」**というケースです。



「伝わる」と「できるようになる」は、同じではない


研修やマニュアルの現場でよく起こることがあります。説明を聞いた本人は「わかりました」と言う。理解度テストをやれば、正答率も悪くない。ところが、いざ実際の業務の場面になると、教わったはずのことができない。

これは、情報が伝わっていなかったわけではありません。「わかる」ことと「できる」ことのあいだには、もう一段階の距離があるのです。


情報伝達がうまくいけば、受け手は「理解」します。しかし、行動として「できる」ようになるには、理解した知識を、実際の場面に当てはめて使ってみる経験と、その経験を通じたフィードバックが必要です。1回の説明、1回のセミナー、1回のマニュアル通読で、この距離を飛び越えるのは簡単ではありません。



なぜこの距離が見落とされやすいのか


聞き手には、「今はこの話をしている」という前提となっている状態があります。この前提としている思考が明確であるほど、その話に沿った理解・解釈の仕方になっていきます。すると頭は先回りして、「だとすると、こうだろう」と、話の展開を予測し始めます。そして、話し手が実際に伝えている内容と、聞き手の頭の中で先回りして組み立てられた内容との間に、少しずつズレが生まれていきます。


こうしたズレは珍しいことではなく、聞き手がその瞬間の話に完全に集中できているとは限らない、という単純な事実から起こります。話を聞きながら、頭のどこかで次の展開を予測したり、自分の経験と照らし合わせたりするのは、ごく自然な思考の働きです。しかしその働きこそが、「伝えた内容」と「受け取られた内容」の間に、本人も気づかないズレを生む原因になります。


このズレは、理解度テストのような、断片的な確認では見つけにくいものです。個々の設問には正しく答えられても、話全体の文脈やつながりの中で、微妙に異なる解釈をしたまま「わかった」つもりになっている、ということが起こり得ます。伝達がうまくいったという手応えは、しばしば「教育がうまくいった」という錯覚を生みます。研修担当者が「わかりやすく伝えられた」という達成感を持つことと、受講者が実際に「できるようになった」ことは、別の指標だからです。



「できるようになる」を実現する設計とは


「わかる」から「できる」への距離を埋めるには、伝達の工夫だけでなく、学びの設計が必要になります。

具体的には、理解した知識を使ってみる機会(演習やシミュレーション)を用意すること、そしてその結果を確認し、できていない部分に気づける仕組み(理解度確認やフィードバック)を組み込むことです。さらに、1回で完結させず、時間をおいて繰り返し触れる機会(反復学習)を設計に含めることも欠かせません。


これらは、情報を「どう伝えるか」ではなく、学びを「どう積み上げさせるか」という、全く別の設計思想です。優れた伝え手が、必ずしも優れた教育設計者であるとは限らないのは、このためだと考えています。



教育設計を、資料の中から組み立てる


当社が取り組んでいる「コンテキストAI」は、この「できるようになる」ための設計を、社内資料から自動的に組み立てる仕組みです。

社内に眠っている手順書やマニュアルから知識を抽出し、学習目標を整理したうえで、演習や理解度確認を組み込みながら、学ぶ人が実際に「できるようになる」までの道筋を設計します。単に情報をわかりやすく伝えるだけでなく、その先の「行動できる状態」までを見据えた設計です。


ただし、ここも正直にお伝えしたい点です。演習や理解度確認の"仕組み"は用意できますが、現場で実際にやってみて、うまくいかない部分に気づき、声をかけ、励ましながら伴走する役割は、引き続き人にしかできないことだと考えています。AIが土台となる学びの設計を担い、そのうえで人が仕上げていく。この組み合わせが、当社の一貫した考え方です。



まとめ


「伝わる情報伝達」は、確かに重要です。しかし、それだけでは「できるようになる」ことは保証されません。伝えることと、育てることのあいだには、もう一段の設計が必要です。


その設計を、既にある社内資料から組み立てる仕組みについては、こちらのページで詳しくご紹介しています。

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