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従業員教育は、なぜ教材を作るだけでは改善しないのか。250名調査から見えた課題


社内には、従業員教育に活用できそうな情報が数多くあります。

業務マニュアルや製品説明資料、社内規程、過去の研修資料、熟練者が持つ知識やノウハウ。こうした情報を教材として活用できれば、教育の効率や質を高められる可能性があります。


しかし、企業は社内にある情報を、十分に教材へ変えられているのでしょうか。

当社は、従業員教育に関わる教育担当者・経営者250名を対象に、「従業員教育と社内ノウハウの教材化に関する実態調査」を実施しました。


調査では、社内資料やノウハウを教材として「あまり活用できていない」「まったく活用できていない」とした回答が、合わせて43.2%となりました。「十分に活用できている」「ある程度活用できている」の合計38.4%を上回っています。

資料がないから、教材を作れないとは限りません。


企業の中に情報はあっても、それを対象者に合わせて整理し、学べる内容へ変換する工程に難しさがある。この結果からは、そのような状況が見えてきます。

ただし、今回の調査を詳しく見ていくと、課題は教材制作だけではありませんでした。



教育課題は、一つの工程に集中していない


従業員教育や教材づくりで感じている課題を複数回答で尋ねたところ、最も多かったのは「教育効果を測定できていない」の23.6%でした。

続いて「教材を作成する時間がない」が22.8%、「社内資料や業務ノウハウを教材化できていない」と「従業員の知識や経験に合った教育ができていない」が、それぞれ20.4%となっています。


この結果で注目したいのは、特定の課題だけが突出していないことです。

教材を作る時間がない。資料を教材へ変えられない。対象者に合った教育ができない。教育の効果を測れない。教材を更新する時間も確保できない。


企業が直面している問題は、教材制作の一工程ではなく、教育の目的を決めてから教材を作り、実施し、効果を確認して更新するまでの流れ全体に分散しています。

教材制作の時間だけを短くしても、その後の運用や評価が設計されていなければ、従業員教育全体が改善するとは限りません。



「誰に合わせるか」が、大きな課題になっている


最も大きな課題を一つ選んでもらった設問では、「従業員の知識や経験に合った教育ができていない」が14.0%で最多となりました。

次いで「社内資料や業務ノウハウを教材化できていない」が13.2%、「教材を作れる人材がいない」が10.8%でした。


同じ業務を学ぶ場合でも、新入社員と経験者では必要な説明が異なります。新入社員には用語や業務の全体像から伝える必要がありますが、経験者には例外への対応や判断基準など、実践的な内容が求められるでしょう。


ところが、社内資料の多くは、特定の学習者を想定して作られていません。

製品説明資料は、顧客へ説明するために作られています。業務マニュアルは、必要な手順を参照するためのものです。社内規程は、ルールを正確に記録することが目的です。

そこに書かれた情報が正しくても、誰に何を身につけてもらうのかが設計されていなければ、そのままでは教材として使いにくい場合があります。


資料を短くまとめるだけでなく、対象者の前提知識を考え、学習目標を定め、理解しやすい順番へ組み替える必要があります。


43.2%という教材活用の課題には、単に資料を加工する時間がないことだけでなく、こうした教育設計の難しさも含まれていると考えられます。



教材制作の担当が、複数の部門に分かれている


誰が教材制作を担当しているかという設問では、「現場の管理職・従業員」が19.2%で最も多い結果となりました。


「人事・研修部門の専任担当者」と「人事・研修部門と現場が共同で制作」がそれぞれ16.0%、「人事・研修部門の兼任担当者」が14.8%です。一方、「決まった担当者はいない」という回答も12.0%ありました。


教材制作には、教育設計と業務知識の両方が必要です。


人事・研修部門は、対象者や教育目的、実施方法を設計できます。しかし、現場で必要とされる判断や例外対応まで、すべて把握しているとは限りません。


現場の担当者は業務を詳しく知っていますが、通常業務と並行して教材を作り、継続的に更新する時間を確保するのは容易ではありません。


教材を作る人材がいないという課題は、担当者が一人もいないという意味だけではないでしょう。必要な知識を持つ人、教育を設計する人、制作や更新を進める人の役割が整理されていない場合にも、教材化は止まりやすくなります。


誰か一人に制作を任せるのではなく、人事・研修部門と現場が、それぞれ何を確認するのかを決める必要があります。



教育効果は、受講直後の確認に偏っている


今回の調査では、教育効果をどのように確認しているかも尋ねました。

最も多かったのは「受講者アンケート」の38.8%で、「理解度テスト」が34.8%、「受講・修了状況」と「上司や担当者による評価」がそれぞれ28.4%でした。


一方、「現場での業務成果」は20.0%、「研修後の行動変化」は15.2%にとどまっています。


アンケートや理解度テストは、研修直後の反応や知識の理解を確認するうえで有効です。ただし、教材を見終えたことや問題に正解できたことが、実務で適切に行動できることを保証するわけではありません。


たとえば、製品の機能を覚えることと、顧客の課題に応じて適切な提案ができることは異なります。規程の内容を知っていることと、問題が起きそうな場面で正しい行動を選べることも同じではありません。


教材を作る段階で、何を理解してほしいのかだけでなく、学習後にどのような行動を期待するのかまで決めておく必要があります。

教育効果の測定が課題の最多となった背景には、教材制作と業務上の成果が十分につながっていない状況もあると考えられます。



AIへの期待は「作ること」より「作り続けること」


AIを利用して社内資料や業務マニュアルから教材を作成・編集するツールについては、57.6%が「非常に関心がある」「やや関心がある」と回答しました。


期待することの最多は「教材の更新を効率化できる」の37.6%です。「教材制作にかかる時間を短縮できる」の37.2%をわずかに上回りました。


ここには、教材制作の負担が初回だけでは終わらないという実務上の事情が表れています。

製品仕様や社内制度、業務手順が変われば、教材も更新しなければなりません。最初の教材を短時間で作れても、その後の変更を反映できなければ、教材は少しずつ現場の実態から離れていきます。


AIに期待されているのは、教材を一度作ることだけではありません。元資料の変更に合わせて内容を見直し、継続的に使える状態を保ちやすくすることだと考えられます。



効率化への期待と、正確性への懸念は表裏にある


AIによる教材作成で最も多く挙げられた懸念は、「AIが生成した内容の正確性」の36.4%でした。


続いて「自社の業務に合った教材になるか」が30.0%、「社内情報や機密情報の漏えい」が28.0%となっています。

AIが短時間で自然な文章を作れるようになったからこそ、生成された内容を誰が確認するのかが重要になります。


文章として読みやすくても、元資料とは異なる内容が加えられているかもしれません。一般的には正しい説明でも、自社の業務手順には合っていない可能性があります。元資料自体が古ければ、古い情報を分かりやすく整理した教材ができてしまいます。

AIの性能だけに正確性を委ねるのではなく、どの資料を根拠に生成したのかを確認し、公開前に担当者が修正できる運用が必要です。


AIが下書きを作り、人が業務の文脈と教育の目的を加えて仕上げる。この役割分担は、制作の効率化と内容の信頼性を両立するための現実的な方法です。



教材制作を、教育活動全体の中で考える


今回の調査から見えてきたのは、企業の従業員教育が、複数の課題によってつながっているということです。


社内資料やノウハウを教材へ変えられない。対象者の知識や経験に合った内容を作れない。制作や更新を担う人材と時間を確保できない。教材を公開した後も、教育効果を十分に測定できていない。


これらは、それぞれ独立した問題ではありません。


誰に何を身につけてもらうかを定め、社内の知識を学べる順番へ組み替える。教材を届け、結果を確認し、業務や制度の変化に合わせて更新する。従業員教育を改善するには、この一連の流れを設計する必要があります。


生成AIは、その中にある教材制作や更新の負担を軽減できます。ただし、AIを導入するだけで、教育の目的や効果測定まで自動的に決まるわけではありません。


教材を作ることをゴールにせず、学習者の理解や行動をどのように変えるのかまで考える。今回の調査結果は、従業員教育を制作業務ではなく、継続的な教育活動として捉え直す必要性を示しているのではないでしょうか。



調査結果の詳細を公開しています


今回ご紹介した設問のほか、企業で中心となっている教育方法、AIによる教材作成に期待すること、導入時に懸念されていることなどを、無料調査レポートにまとめています。

本調査は、従業員教育に関わる教育担当者・経営者250名を対象に、2026年7月に実施しました。回答者が勤務先の状況を評価した結果であり、企業単位の導入率や日本企業全体の市場シェアを示すものではありません。


従業員教育や社内ノウハウの教材化を検討する際の参考資料として、ご活用ください。



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