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チームとしての決定プロセスと個々の役割

更新日:8月26日


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【部下育成の新常識】チームの生産性を劇的に上げる「意思決定」の科学


「うちのチームは、会議は長いのに何も決まらない…」

「部下に『自分で考えて動いて』と伝えても、結局指示待ちになってしまう…」

企業の研修担当者や、チームを率いる管理職の皆様から、このようなお悩みをよく伺います。メンバーが自律的に動き、チームとして質の高いアウトプットを出し続ける。その鍵を握るのが、「意思決定」の質とスピードです。


本記事では、研修や現場のマネジメントですぐに使える具体的なフレームワークを交え、「部下が育ち、チームが強くなる意思決定プロセス」について、明日から実践できるレベルまで掘り下げて解説します。


なぜ、あなたのチームは「決められない」のか?


多くのチームが陥りがちな「決められない」状況。その背景には、いくつかの典型的な要因が潜んでいます。


  • 責任の所在が曖昧: 「誰かが決めるだろう」と、全員が他人任せになっている。

  • 反対意見への恐怖:「和を乱したくない」という思いから、健全な議論が生まれず、当たり障りのない結論に流れてしまう。(集団浅慮:グループシンク)

  • 判断基準の欠如: 何を優先し、何を捨てるべきか、チームとしての共通の物差しがない。

  • 失敗への恐れ: 失敗が許されない文化が、挑戦的な意思決定を妨げている。


心当たりはないでしょうか。これらの課題は、個人の意識だけでなく、チームとしての「意思決定の仕組み」に問題があるケースがほとんどです。



STEP1:役割を科学する「RACIチャート」で責任を明確に


コラボレーションは不可欠ですが、「みんなで考える」が「誰も責任を取らない」状態に陥ってはいけません。そこで有効なのが、役割分担を明確にするフレームワーク「RACI(レイシー)チャート」です。


あるタスクや決定事項に対して、誰がどの役割を担うのかを可視化します。


  • R(Responsible:実行責任者): 実際にタスクを実行する担当者


  • A(Accountable:説明責任者): そのタスクの最終的な責任者。決定権を持つのはこの人です。必ず1名だけ任命します


  • C(Consulted:相談先): 決定前に相談を受ける専門家や関係者。双方向のコミュニケーションが発生します


  • I(Informed:報告先): 決定後に報告を受ける関係者。コミュニケーションは一方向です


【活用例】新商品Aのプロモーション企画

タスク

Aさん(リーダー)

Bさん(マーケ)

Cさん(営業)

Dさん(法務)

企画立案

A

R

C

I

予算策定

A

R

C


プレスリリース配信

R

A

I

C

会議の冒頭で、「この会議の目的は〇〇を決定することです。そして、その決定のA(説明責任者)は私です。皆さんのRとしての意見や、Cとしての専門的知見を聞かせてください」と宣言するだけで、議論の質とスピードは劇的に向上します。



STEP2:判断の軸を揃える「アイゼンハワー・マトリクス」


意思決定には、必ずリスクとトレードオフが伴います。特に時間は有限であり、全てのタスクを完璧にこなすことは不可能です。ここで重要になるのが「優先順位」の考え方です。

元の記事でも触れた「緊急性」と「重要性」。この2軸でタスクを整理するフレームワークが「アイゼンハワー・マトリクス」です。


重要度:高

重要度:低

緊急度:高

第1領域:すぐやる (クレーム対応、システムの急な不具合)

第2領域:人に任せる、断る (多くの電話、一部の会議)

緊急度:低

第3領域:計画して実行する (部下育成、新規事業企画、スキルアップ)

第4領域:やらない (無意味な資料作成、過剰な情報収集)


多くの人は、目先の「第1領域(緊急かつ重要)」に追われがちです。しかし、チームの未来を創るのは「第3領域(緊急ではないが重要)」への投資です。


部下に仕事を任せる際、「このタスクは、我々のチームにとってどの領域に当たると思う?」と問いかけ、視点を合わせるトレーニングをしてみましょう。これにより、部下は単なる作業者ではなく、戦略的な視点を持って仕事に取り組むようになります。



STEP3:「決める経験」こそが、最高の育成機会


部下が育たないのは、能力がないからではなく、「決める経験」が圧倒的に不足しているからです。


人は、小さな成功体験と、許容される範囲での失敗経験を通じてしか、「決める力」を養うことはできません。

上司の役割は、完璧な正解を教えることではなく、部下が意思決定するための「安全な練習場」を提供することです。


  1. 小さな権限移譲から始める: まずは影響範囲の小さい業務から、「君に任せるよ。最終的な判断をしてみて」と委ねてみましょう。


  2. 判断のプロセスを問う: 結果だけでなく、「なぜそう考えたの?」「他にどんな選択肢があった?」と、思考のプロセスに寄り添い、フィードバックを与えます。


  3. 失敗の責任は上司がとる:「何かあったら私が責任を取るから、思い切ってやってみなさい」という姿勢が、部下の挑戦を後押しします。


日々の業務の中に、「決める癖」を育む機会は無数にあります。その機会を意識的に作り出すことが、マネジメントの要諦です。



まとめ:意思決定力を「個人のスキル」から「チームの文化」へ


優れたチームは、特定のリーダーのカリスマ性だけに依存しません。チーム全体に、質の高い意思決定を生み出す「仕組み」と「文化」が根付いています。


  • RACIチャートで、誰が何を決めるのかを明確にする(仕組み)


  • アイゼンハワー・マトリクスで、判断の軸をチームで共有する(仕組み)

  • 小さな「決める経験」を奨励し、健全な失敗を許容する(文化)


これらの取り組みは、個々のスキルアップに繋がるだけでなく、チーム全体の生産性と心理的安全性を高め、変化に強い組織を創り上げます。


ぜひ、次回のチームミーティングで、この記事の内容を参考に「我々の意思決定プロセス」について話し合ってみてください。それが、チームを次のステージへ引き上げる、重要な第一歩となるはずです。

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