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知識は「中身」だけでなく「つながり方」に宿る -圏論から考える教材設計


2026年7月19日の日本経済新聞・科学面に、興味深い記事が載っていました。京都大学の研究者が「圏論」という数学の考え方をAIモデルに応用し、大阪大学の研究者が同じ考え方を哲学に応用しているという内容です。


圏論は、対象そのものではなく、対象同士の関係性に注目する数学の考え方だと紹介されていました。記事では、物体を構成する部分同士の関係を捉えることで、向きや姿勢が変わっても同じ対象として認識するAI研究が取り上げられています。専門的な数学の話ではありますが、このエッセンスには、私たちが日々「コンテキスト化」と呼んでいる作業と重なる発想がある、と感じました。



私たちが資料を扱うときも、似た壁にぶつかります


社内資料をお預かりして教材化する仕事をしていると、これとどこか似た課題にぶつかります。

紙の手順書、動画マニュアル、eラーニング教材では、見た目も形式もまったく異なります。文章のスタイルも、図の使い方も、会社ごとにバラバラです。表面的に比較すれば、共通点はほとんど見当たりません。


しかし、「前提となる知識を理解する→手順を実行する→例外的なケースに対応する」という知識同士のつながり方に注目すると、形式は違っても、驚くほど似た構造をしていることに気づきます。用語が手順の前提になっている、原因が結果につながっている、基礎ができて初めて応用が理解できる――こうした関係性は、業種や会社が違っても、共通したパターンを持つことが多いのです。


私たちが「コンテキスト化」と呼んでいる作業にも、これと重なる発想があります。中身の表現そのものではなく、知識同士のつながり方を捉えることで、形式の異なる資料からも、共通する設計の考え方を用いて教材を組み立てやすくなります。



表現を追いかけると、いつまでも終わらない


もし教材づくりにおいて、資料の文言や表現そのものを一つひとつ真似ようとすると、資料が変わるたびにゼロからやり直しになります。表現は無限にバリエーションがあるからです。


しかし、知識同士のつながり方という構造に注目すれば、話は変わってきます。構造は、表現ほど多様ではありません。同じ業種、同じような規模の会社であれば、「まず全体像を伝え、次に手順を教え、最後に例外パターンを扱う」といった構造は、多くの場合共通しています。私たちが特定の業種・業務のマニュアルを何本も扱ってきた中で、実感してきたことです。


構造に注目するという発想の転換が、資料ごとにゼロから設計をやり直す必要をなくし、教材化のスピードを大きく変えているのだと思います。



この発想は、当社の設計思想そのものに繋がっています


ここまで書いてきた「表現そのものではなく、つながり方に注目する」という発想は、実は当社が教材設計で大切にしている考え方と重なります。


たとえば、同じ知識を「入門者向け」「実践者向け」「習熟者向け」に組み替えるとき、私たちが変えているのは説明の深さや切り口であって、知識同士のつながり方そのものではありません。入門・実践・習熟は、別々の教材ではなく、同じ構造を持つ知識の、異なる見え方なのだと捉えると、レベル別設計という作業の本質が見えてきます。


また、「資料に書かれていない情報を勝手に足さない」という当社の姿勢も、この発想と根っこは同じです。資料という構造をお預かりしたら、その構造を保ったまま学習コンテンツに変換する。変換の過程で、元にない知識を勝手に生み出さない。これは当社が最初から大切にしてきた誠実性の原則ですが、「構造を保ったまま変換する」という視点で捉え直すと、単なる方針以上の、設計思想としての一貫性が見えてきます。


学習者がどこでつまずいたかを捉え、次に何を学べば良いかを見つけていく仕組みについても、同じ発想が土台になります。学習者の理解を「今の状態」として捉え、次に到達すべき「状態」との関係性を辿っていく——という考え方は、まさに私たちが今後さらに力を入れていきたい領域です。


こうした発想を、当社では一朝一夕に完成された機能としてではなく、教材設計全体を貫く考え方として、時間をかけて育てていきたいと考えています。



なぜ私たちは、この発想にこだわるのか


表現の違いに惑わされず、つながり方を見る。この発想は、実は当社の社名にも深く関わっています。


次回は、なぜ私たちが「コンテキスト」という言葉を社名に選んだのか、その理由についてお話ししたいと思います。

日経新聞に掲載された数学の話がきっかけで考えたことを、教材設計の話につなげてみました。少し変わった切り口ですが、こういう記事も時々あって良いのかなと思います。


社内資料の中にある知識のつながりを捉え直し、学びやすい教材に変換する仕組みについては、こちらのページで詳しくご紹介しています。


参考資料 日本経済新聞 2026年7月19日朝刊 科学面「AIも哲学も『圏論』活用 数学拡張ツール、裾野広がる」

※本記事は、同記事で紹介された圏論の考え方をきっかけに、筆者が教材設計とコンテキスト化について独自に考察したものです。



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