コンテキストAIができるまで 番外編。復習コース構想を「今の状態」と「目指す状態」から考える
- Adop-Context

- 2 日前
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これまで5回にわたって、コンテキスト化メソッドの5つのステップをご紹介してきました。
社内資料から知識を整理する「ナレッジ抽出」、教材の到達点を考える「学習目標設計」、学ぶ順番を組み立てる「シーケンス設計」、スライドや音声ナレーション、確認クイズを作る「コンテンツ生成」、そして配信後の進捗やクイズ結果を確認する「効果測定」です。
今回は番外編として、効果測定のさらに先にある、現在開発を進めている「復習コース」の構想についてお話ししたいと思います。
なお、今回ご紹介する復習コースは、現時点では提供前の構想・開発中の機能です。
効果測定の先にある、まだ実現していないこと
前回の「効果測定編」でお伝えした通り、コンテキストAIは現在、受講者の進捗や確認クイズのスコアをダッシュボードで可視化するところまでを実現しています。
誰がどこまで受講しているのか。どの問題に正答できているのか。どの知識ポイントで理解が十分ではない可能性があるのか。こうした情報を、数字として確認できます。
ただし、そこで見えるのは「気づくためのきっかけ」までです。
正答率が低い知識ポイントが見つかったとしても、その先に何を、どのように学び直せばよいのかを考え、必要な教材を用意するのは、今のところ研修担当者の役割です。
現在、この部分を一歩進める機能として、正答率が低い知識ポイントを自動的に検出し、その結果に応じた復習コースの案を作る仕組みの開発を進めています。
AIが作った案を管理者が確認し、必要に応じて修正したうえで、対象となる受講者へ復習の機会を用意する。現時点では、そのような流れを想定しています。
「終わらせなきゃ」と「理解してほしい」のギャップ
この構想の背景には、必須研修で起こりやすい課題があります。
必須研修は、その名の通り、受講することが決められています。すると受講者にとっては、「やらなければならないもの」という意識が先に立つことがあります。
その結果、内容を理解することよりも、期限までに受講を終えること自体が目的になってしまう場合があります。最後まで画面を進め、確認クイズへ回答し、受講済みの状態にする。そこまで進めば、研修は終わったように見えます。
一方、研修を企画する側には、当然ながら「この内容は、きちんと理解してほしい」という意図があります。単に受講履歴を残してほしいのではなく、日々の業務で必要な知識として身につけ、行動につなげてほしいと考えています。
ここに、受講者の「終わらせなきゃ」という意識と、企画する側の「理解してほしい」という意図のあいだに、ギャップが生まれます。
このギャップを小さくするための一つの試みが、復習コースです。
一度受講を終えた人でも、確認クイズの結果から理解が十分ではない可能性のある部分が見つかった場合には、そこだけをもう一度学び直す機会を用意します。
すべての教材を最初から受講し直すのではなく、理解が不十分だった可能性のある知識ポイントに絞って復習する。これによって、「終わらせること」で止まっていた学習を、もう一歩「理解すること」へ近づけられるのではないかと考えています。
もちろん、復習コースを用意するだけで、受講者の意識まで自動的に変わるわけではありません。それでも、理解が十分でなかった部分を絞り込み、もう一度触れる機会を作ることには意味があると思っています。

「今の理解」と「目指す理解」をつなぐ
この復習コース構想を考えるとき、当社の中で立ち返っている考え方があります。
以前の記事「圏論から考える教材設計」では、対象そのものだけを見るのではなく、対象同士の関係性に注目するという発想について書きました。
学習者の理解を一つの「状態」として捉え、次に到達してほしい「状態」との関係を考える。以前の記事では、このような考え方が、今後さらに力を入れていきたい領域につながると書きました。
今回の復習コース構想には、この考え方と重なる部分があります。
ただし、圏論をそのまま製品へ実装しているという意味ではありません。「今の理解」と「次に目指す理解」の関係から、学び直す内容を考えるという点で、発想につながっているということです。
確認クイズの結果から、どの知識ポイントで理解が十分ではない可能性があるのかを捉え、それを「現在の状態」として扱います。そして、学習目標として設定された「目指す状態」との間に、どのような知識が必要なのかを整理します。
この二つの状態のあいだにある知識のつながりを捉えることができれば、現在の回答結果から、次に復習すべき内容の案を示せるようになります。
これは、シーケンス設計で扱ってきた「知識同士の依存関係」を、受講者ごとのクイズ結果と結びつけ、復習内容の提案へ活用しようとする試みでもあります。
たとえば、応用的な問題に間違えたとしても、その原因が応用部分にあるとは限りません。前提となる基本用語の理解が不十分だったり、標準的な手順を正しく捉えられていなかったりする可能性もあります。
その場合、間違えた問題だけをもう一度出題するのではなく、その問題を理解するために必要な前提知識まで戻って復習する。そのような流れを作りたいと考えています。
正答率だけで、理解のすべてが分かるわけではない
ここで注意したいのは、確認クイズの結果が、その人の理解状態を完全に示すわけではないということです。
問題に間違えた理由は、知識が不足していたからかもしれません。問題文の意味を取り違えた可能性もあります。業務経験が少なく、状況を具体的に想像できなかったのかもしれません。単純な操作ミスという場合もあります。
反対に、正解していても、選択肢を覚えていた、偶然正解した、全体の文脈を十分に理解しないまま部分的な知識で回答した、ということもあり得ます。
そのため、復習コースは「この人は理解できていない」と断定するためのものではありません。
クイズの結果から、もう一度確認したほうがよい可能性のある内容を見つけ、その人が学び直すための案を示すものです。
数字が示すのは、あくまで結果です。その原因を読み取り、本当に必要な支援を考えるところには、引き続き人の関わりが必要です。
復習コースが実現しても、変わらないこと
この機能が実現すれば、「正答率が低い」という結果を表示するだけでなく、その知識ポイントに対応する内容をもとに、何を学び直すべきかという案まで、AIが提示できるようになります。
効果測定による「気づくためのきっかけ」から一歩進み、「気づいた後、何を、どう学び直せばよいか」までを、ある程度自動的に示せるようにしたいと考えています。
ただし、これによって研修後のフォローまですべて自動化されるわけではありません。
復習コースが提示されたとしても、なぜ間違えたのかを丁寧に確認し、人による説明や実務での練習が必要な場合もあります。知識を覚え直すだけでは解決せず、上司や経験者と一緒に実際の業務を進めたほうがよいこともあります。
復習コースの提案でも、AIが内容の案を作り、人が元資料や業務上の重要性、受講者の状況を踏まえて確認するという役割分担は変わりません。
この機能は、研修担当者が一人ひとりの結果を確認し、毎回ゼロから復習内容を考える負担を減らすためのものです。人の関与そのものをなくすためのものではありません。
AIが学び直しの道筋の案を示し、人がその人に必要な支援を考える。その関係は、これまでのコンテキストAIと変わらないと考えています。
教材を作って終わらない循環へ
これまでの連載では、コンテキストAIがどのような工程で教材を作っているのか、その裏側をご紹介してきました。
ナレッジ抽出、学習目標設計、シーケンス設計、コンテンツ生成、効果測定。それぞれは独立した機能ではありません。
社内資料から知識を取り出し、誰に何を学んでほしいのかを整理する。その到達点へ向かう順序を設計し、実際の教材へ変える。配信後には進捗やクイズの結果を確認し、必要な改善へつなげる。一つの流れとしてつながっています。
この流れの中には、当社がこれまでブログで書いてきた考え方も反映されています。
「分かるだろう」という前提に頼らず、言葉や知識の関係を整理すること。「記憶は順序と文脈に宿る」と表現してきたように、情報同士のつながりや、学ぶ道筋を考えること。そして、AIへすべてを任せるのではなく、AIが案を作り、人が確認することです。
復習コースは、この流れをさらに先へ進めようとする構想です。
作って、配信して、測って、見直す。さらに、測定結果から学び直しまでをつなげることで、この循環を途中で止めない仕組みにしたいと考えています。
「教育設計のない会社をなくす」という目的地へ
教材を一度作るだけであれば、AIによって大きく時間を短縮できるようになりました。
しかし、企業の教育は、教材を作って配信すれば終わるものではありません。実際に学ばれたのかを確認し、理解が十分ではなかった部分があれば、もう一度学ぶ機会を作る必要があります。
研修担当者が、そのすべてを手作業で行うのは簡単ではありません。受講者が多くなれば、一人ひとりの結果を確認し、それぞれに合った復習内容を考える負担も大きくなります。
作って、配信して、測って、見直す。この循環を、より多くの企業が、より少ない負担で回せるようにすること。
それが、当社が掲げる「教育設計のない会社をなくす」という目的地に向けた、これからの取り組みです。
AIによって教育担当者を不要にするのではありません。教材を一から作る作業や、結果から毎回復習内容を考える作業をAIが支援することで、人は受講者の状況を見て、必要な声をかけることに時間を使えるようになります。
この役割分担を、効果測定の先にある学び直しまで広げたいと考えています。
まとめ
復習コース構想は、必須研修で起こりやすい、受講者の「終わらせなきゃ」という意識と、企画する側の「理解してほしい」という意図のギャップを小さくするための試みです。
受講者のクイズ結果から見える現在の理解状況と、学習目標として設定した目指す状態との間を、復習内容でつなごうとしています。
この発想には、以前の圏論の記事で触れた、対象そのものだけでなく、対象同士の関係に注目する考え方と重なる部分があります。ただし、圏論をそのまま製品に実装しているという意味ではありません。
また、復習コースが実現しても、人による確認やフォローが不要になるわけではありません。AIが復習内容の案を示し、人が実際の業務や受講者の状況に照らして確認するという役割分担は、これからも変わらないと考えています。
「コンテキストAIができるまで」の連載は、今回で一区切りとなります。
社内資料から教材を作る具体的な流れや活用イメージについては、コンテキストAI実践ガイドでご紹介しています。
機能やプランについては、コンテキストAIのサービスページをご覧ください。




