従業員の知識や経験に合った教育は、なぜ難しいのか
- Adop-Context

- 2 分前
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従業員教育に関わる教育担当者・経営者250名を対象に実施した調査では、「従業員の知識や経験に合った教育ができていない」が、最も大きな課題として14.0%で最多となりました。
14.0%という数字だけを見ると、それほど高く感じないかもしれません。ただ、最も大きな課題を一つだけ選ぶ設問で、教材化や人材不足、制作時間、効果測定などを上回った結果です。
同じ企業の中でも、新入社員と経験者では、すでに知っていることや仕事で求められる判断が異なります。職種や担当業務が変われば、必要な知識の範囲も変わるでしょう。
その違いに合わせて教育を設計することは、多くの企業が感じている以上に難しい課題です。
同じ内容を学んでも、出発点は一人ひとり異なる
企業研修では、多くの場合、対象者全員へ同じ教材が提供されます。
集合研修で同じ説明を聞き、eラーニングで同じコースを受講し、最後に同じ確認問題へ回答する形式です。共通して身につけるべき知識を効率よく届けるうえで、この方法には大きな利点があります。
一方、学習者が持っている知識や経験は同じではありません。
初めて業務へ携わる人は、専門用語や業務全体の流れから理解する必要があります。すでに実務経験がある人にとっては、基本的な説明よりも、条件による判断の違いや例外への対応が重要になります。
同じ教材を提供しても、初めて学ぶ人には説明が足りず、経験者には既知の内容が多くなることがあります。教育内容の難易度が一つしか用意されていないと、学習者の出発点との間にずれが生まれます。
このずれを小さくするには、教材を作り始める前に、誰が学ぶのかを具体的に捉える必要があります。
対象者を「新入社員」で終わらせない
教材設計では、「新入社員向け」「管理職向け」「営業担当者向け」といった対象者が設定されます。
ただ、同じ新入社員でも、大学で関連分野を学んだ人と、初めて触れる人では前提知識が異なります。同じ営業担当者でも、入社したばかりの人と、長年にわたり顧客を担当してきた人では、必要な教育内容が変わります。
対象者を部署や役職だけで分類すると、その中にある知識や経験の違いまでは捉えきれません。
そこで、対象者を考える際には、所属や役職に加えて、現在どこまで理解し、どのような業務を経験しているのかを確認します。
さらに、教育を受けた後、どのような場面で、何ができるようになってほしいのかまで具体化すると、必要な教材の範囲が見えてきます。
対象者の設定は、教材の表紙に記載する属性を決める作業ではなく、学習の出発点と到達点を定める作業です。
前提知識がそろわないまま説明を進める難しさ
私たちが研修テキストや社内資料を教材へ変える際にも、元の資料に書かれている内容だけでは、学習者の理解がつながりにくいことがあります。
業務に詳しい人が作成した資料では、基本的な用語や背景が省略されている場合があります。作成者にとっては説明を加える必要のない内容でも、初めて学ぶ人にとっては、その部分が理解の入口になります。
前提知識がそろわないまま説明を進めると、学習者は途中から内容についていけなくなります。ただし、すべてを基礎から説明すると、経験者にとっては冗長な教材になります。
この問題を解消するためには、教材を一つの長い説明として作るのではなく、学ぶ内容を小さな単位に分けて構成する方法が有効です。
基礎用語を学ぶ単元、業務全体の流れを理解する単元、具体的な手順を扱う単元、条件や例外を判断する単元というように分けることで、学習者の経験に応じた組み合わせが可能になります。
全員が共通して学ぶ内容と、必要な人だけが学ぶ内容を整理すれば、教育の一貫性を保ちながら、対象者に合わせた学習を設計できます。
経験者には、説明よりも判断を学ぶ機会が必要になる
経験者向けの教育では、説明を詳しくするだけでは、実務に生かせる学びになりにくいことがあります。
すでに基本的な知識や手順を理解している人に必要なのは、知識をもう一度覚えることよりも、状況に応じて使い分けることです。
たとえば、顧客対応では、標準的な手順を理解したうえで、顧客の状況や要望に応じて対応を変える必要があります。品質管理や安全管理でも、ルールを知ることに加えて、通常とは
異なる兆候に気づき、適切な対応を選ぶ力が求められます。
このような力を育てるには、説明中心の教材に、事例や問いを加えていきます。
「この状況では何を確認するか」「複数の選択肢からどの対応を選ぶか」「判断するために不足している情報は何か」と考えてもらうことで、経験者が持つ知識を、実務で使える判断へつなげられます。
対象者に合わせた教育とは、同じ内容の難易度を上下させることだけではありません。初めて学ぶ人には理解の土台を用意し、経験者には知識を判断へ変える機会を提供することです。
すべてを個別に作る必要はない
従業員の知識や経験に合わせると聞くと、一人ひとりに異なる教材を作るような、大がかりな取り組みを想像するかもしれません。
実際には、共通する教材を土台にしながら、必要な単元を組み替える方法で対応できます。
最初に、全員が理解すべき知識を共通部分として整理します。そのうえで、初心者向けの基礎説明、職種別の業務内容、経験者向けの事例や判断問題を、それぞれ独立した単元として用意します。
学習者の属性や経験に応じて受講する単元を変えれば、教材をすべて作り直すことなく、対象者に合わせた教育を提供できます。
理解度テストや事前確認を使い、すでに理解している内容と、これから学ぶ必要がある内容を把握する方法もあります。学習者の状態を確認してから教材を割り当てることで、必要な学びへ時間を使いやすくなります。
個別化の目的は、一人ひとりに特別な教材を作ることではなく、現在地に合った学習の入口を用意することです。
学習者の違いを教材設計の出発点にする
従業員の知識や経験に合った教育を行うには、教材を作る前に、学習者の現在地を捉える必要があります。
誰が学ぶのか、すでに何を知っているのか、どのような業務を経験しているのか。そして、学習後にどのような場面で、何ができるようになってほしいのかを整理します。
そのうえで、全員に共通する内容と、対象者によって変える内容を分け、学習単位として組み立てます。
企業研修では、情報を漏れなく伝えることが重視されます。しかし、情報がそろっていても、学習者の前提知識とつながっていなければ、理解には時間がかかります。
社内資料を教育へ活用する際にも、資料に何が書かれているかだけでなく、それを誰が、どのような経験を持った状態で学ぶのかを見ることが大切です。
学習者の違いを教材完成後の調整事項として扱うのではなく、教材設計の出発点に置くことで、同じ社内知識を、それぞれの仕事に生かせる学びへ変えられます。
調査結果の詳細を公開しています
当社では、従業員教育に関わる教育担当者・経営者250名を対象に、「従業員教育と社内ノウハウの教材化に関する実態調査」を実施しました。
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