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教育効果は、なぜ測れないのか。「受講した」で終わる研修から抜け出す


研修を実施した後、企業では受講率や修了率が集計されます。

受講者アンケートを行い、理解度テストの点数を確認することもあります。対象者の多くが研修を受講し、アンケートの評価も高く、テストの正答率にも問題がなければ、研修は無事に完了したように見えます。


しかし、それによって従業員の仕事がどのように変わったのかは、必ずしも分かりません。

当社が、従業員教育に関わる教育担当者・経営者250名を対象に実施した調査では、従業員教育や教材づくりで感じている課題として、「教育効果を測定できていない」が23.6%で最も多く挙げられました。


企業は研修を実施していないのではありません。実施した教育が、本当に仕事へ生かされているのかを確かめにくいのです。



受講したことと、できるようになったことは違う


研修の管理では、確認しやすい数字が使われます。

何人が受講したか。最後まで修了したか。テストに合格したか。アンケートでどのような評価を得たか。


これらは、教育の実施状況を把握するために必要な情報です。ただし、受講したことと、仕事で適切に行動できるようになったことは同じではありません。


製品研修で、製品名や機能を覚えたとしても、顧客の課題を聞き、その状況に合った提案ができるとは限りません。


コンプライアンス研修で、規程の内容を理解しても、実際の業務で問題の兆候に気づき、適切な行動を選べるとは限りません。


業務手順の研修でも、通常の手順を答えられることと、想定外の状況で正しく判断できることには違いがあります。


教育の目的が知識を伝えることだけであれば、理解度テストで確認できる部分もあります。しかし、企業が従業員教育に期待しているのは、多くの場合、知識を得ることだけではありません。


学んだ内容を仕事の中で使い、必要な場面で判断し、適切に行動できるようになることまでが期待されています。



効果測定は、研修後に考えるものではない


教育効果を測れない原因の一つは、測定方法を研修後に考えていることです。

教材が完成し、研修を実施した後になってから、「どのように効果を確認するか」を検討すると、アンケートや理解度テストなど、その時点で実施しやすい方法が中心になります。

ところが、本来は教材を作る前に、何が変われば教育の効果があったと判断するのかを決めておく必要があります。


たとえば、営業担当者向けの製品研修なら、「製品の主要機能を説明できる」ことを目指すのか、「顧客の課題を聞き、適切な製品を提案できる」ことを目指すのかによって、教材の内容も効果の確認方法も変わります。


前者であれば、知識を問うテストで確認できます。後者であれば、事例に対する提案内容や、商談での行動を確認しなければなりません。


教育効果の測定は、研修の最後に付け加える集計作業ではありません。

何を学んでもらい、仕事で何ができるようになればよいのかを定め、その変化を確認できるように教材と研修を設計することです。



「理解・判断・行動」に分けて考える


教育によって起こしたい変化は、「理解・判断・行動」の3段階に分けると整理しやすくなります。


「理解」は、必要な知識やルール、手順を説明できる状態です。

「判断」は、具体的な状況に対して、何をすべきかを選べる状態です。

「行動」は、実際の業務で、その判断に基づいて実行できる状態です。


たとえば、情報セキュリティ研修で考えてみます。

不審なメールの特徴を説明できれば、「理解」は確認できます。複数のメール例から危険なものを見分け、適切な対応を選べれば、「判断」を確認できます。実際に不審なメールを受け取った際、リンクを開かず、定められた窓口へ報告できれば、「行動」へつながっています。


この3段階は、同じ方法では測れません。

理解は、確認問題や説明によって確かめられます。判断は、事例問題やシミュレーションによる確認が適しています。行動は、上司や担当者による観察、業務記録、発生したミスや問い合わせの変化などから見ていく必要があります。

すべての研修で、行動や業務成果まで厳密に測定する必要があるわけではありません。

重要なのは、その研修がどの段階までを目指しているのかを明確にし、目標に合った確認方法を選ぶことです。



アンケートや理解度テストだけでは見えないこと


今回の調査で、教育効果の確認方法として最も多かったのは「受講者アンケート」の38.8%でした。次いで「理解度テスト」が34.8%、「受講・修了状況」と「上司や担当者による評価」が、それぞれ28.4%となっています。

一方で、「現場での業務成果」を確認しているという回答は20.0%、「研修後の行動変化」は15.2%でした。


アンケートや理解度テストが役に立たないわけではありません。

アンケートでは、内容の分かりやすさや難易度、受講者が感じた有用性を確認できます。理解度テストでは、研修で伝えた知識が理解されているかを確かめられます。

ただし、「分かりやすかった」という評価は、仕事で使えるようになったことを意味しません。テストに正解できても、実際の状況で同じ判断ができるとは限りません。

それぞれの測定方法が、何を確認でき、何を確認できないのかを理解して使う必要があります。


研修直後のアンケートだけで教育全体を評価するのではなく、一定期間後に現場での変化を確認する。理解度テストだけでなく、業務に近い事例を使って判断を問う。上司や担当者が観察できる行動を、あらかじめ決めておく。


こうした複数の確認を組み合わせることで、教育と実務の間にある距離が見えやすくなります。



測定できないのは、目的が曖昧だからかもしれない


教育効果を測定できないという課題は、測定ツールが不足していることだけから起きるわけではありません。


研修の目的そのものが、「製品について理解してもらう」「コンプライアンス意識を高める」「業務知識を身につけてもらう」といった抽象的な表現にとどまっていることがあります。


この状態では、研修後に何を確認すればよいのかを決められません。

「理解する」「意識を高める」「身につける」という言葉を、観察できる状態まで具体化する必要があります。


どのような状況で、何に気づき、どのような判断をし、何を実行できればよいのか。

ここまで言語化すると、教材に必要な説明や事例、確認問題も見えてきます。同時に、研修後に何を確認すればよいのかも明確になります。

教育効果を測るためには、研修後の集計方法を増やすより先に、教育によって起こしたい変化を具体的にすることが必要です。



教材制作と効果測定を切り離さない


教材を作るときは、伝える情報の正しさや分かりやすさに注意が向きます。

もちろん、それらは教材に欠かせない要素です。しかし、説明を読みやすく整えただけでは、学習者が実務で判断し、行動できるかまでは分かりません。


学習目標を定め、その目標に必要な説明を選び、事例や確認問題を設計する。研修後には、理解、判断、行動のどこまで変化したかを確認する。その結果をもとに、教材の不足している部分を見直す。


教材制作と効果測定を一つの循環として考えることで、教材は作って終わるものではなくなります。


生成AIによって、説明文や確認問題の原案を短時間で作れるようになっても、何を測るべきかは、教育の目的から決めなければなりません。


AIが教材制作を効率化する時代だからこそ、人が担うべきなのは、学習者にどのような変化を求めるのかを定め、その変化を確認することです。


「受講した」で教育を終わらせず、「仕事で何が変わったのか」までを見る。

そのための最初の一歩は、測定方法を探すことではありません。教材を作る前に、研修後の学習者が、どのような場面で何をできるようになってほしいのかを言葉にすることです。



調査結果の詳細を公開しています


当社では、従業員教育に関わる教育担当者・経営者250名を対象に、「従業員教育と社内ノウハウの教材化に関する実態調査」を実施しました。


教育効果の確認方法のほか、社内資料やノウハウの活用状況、教材制作の体制、生成AIへの期待と懸念などを、無料調査レポートにまとめています。

従業員教育や教材制作の現在地を確認する資料として、ご活用ください。


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