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コンテキストAIができるまで② 学習目標設計編。教材の到達点をどう決めるか


前回の記事では、コンテキスト化メソッドの最初のステップである「ナレッジ抽出」についてご紹介しました。資料の中から用語、手順、現場のコツを見分け、教材を作るための材料として整理する工程です。


今回のテーマは、その次のステップとなる「学習目標設計」です。抽出した知識を、誰に向けて、どのような目的で届けるのか。そして、その教材を学んだ人に、最終的に何ができるようになってほしいのかを整理します。


コンテキストAIにおける学習目標設計とは、抽出した知識をもとに、その教材を通じて何を理解し、何ができるようになってほしいのかという到達点の案を整理する工程です。

学習目標が定まっていなければ、教材に情報を並べることはできても、どこへ向かうための学びなのかが分かりません。何を覚える必要があるのか、どこまで理解すべきなのか、実際の業務で何ができればよいのか。その到達点を定めることが、教材設計の出発点になります。



なぜ、用語の意味を確認するのか


当社の学習目標設計では、まず、ナレッジ抽出によって整理された用語の定義を確認します。


地味に見えるかもしれませんが、ここには見過ごせない意味があります。

社内資料で使われている名詞や名称は、日常業務の中では、いちいち意味を確認しなくても、なんとなく通じてしまうことがあります。社内で長く働いている人同士であれば、言葉の背景や使われ方まで共有できているためです。


しかし、その言葉を新しく学ぶ人にとっては、同じようには理解できません。また、普段から使っている社員同士であっても、改めて意味を確認してみると、微妙に異なる解釈をしていることがあります。


同じ「承認」という言葉でも、内容を確認することを指している人もいれば、正式な決裁を意味している人もいるかもしれません。「完了」「対応済み」「確認済み」といった言葉も、部署や担当者によって捉え方が異なることがあります。


言葉の前提がそろっていなければ、その後の手順や判断条件を説明しても、受け手によって異なる意味に解釈される可能性があります。


教材の中で用語の意味を明確にしておくことで、学ぶ人同士の前提をそろえやすくなり、言葉の解釈によるズレを減らすことができます。用語の整理は、知識を覚えるためだけではなく、その後の学習を同じ土台の上で進めるために必要な工程です。



「何をできるようになってほしいか」を段階で考える


用語や前提となる知識を確認したら、次に考えるのは、学ぶ人に「何ができるようになってほしいか」という到達目標です。


コンテキストAIでは、ブルームのタキソノミーを参考に、企業研修で扱いやすいよう、学習目標を「記憶・理解・適用・分析・統合・評価」という6段階で整理しています。

これは、ブルームのタキソノミーそのものを再現した分類ではありません。企業研修における教材設計や、コンテキストAIの学習目標設定に活用しやすいよう、独自に整理したものです。


たとえば、情報セキュリティをテーマにした教材を考えてみます。

最初の「記憶」は、用語、事実、ルールを正確に覚え、必要なときに思い出せる段階です。情報セキュリティに関する基本用語や、守るべきルールを挙げられることが目標になります。


次の「理解」は、学んだ内容の意味や理由を、自分の言葉で説明できる段階です。単にルールを覚えるだけでなく、なぜそのルールが必要なのか、守らなかった場合にどのような問題が起きるのかを説明できることを目指します。

「適用」は、学んだ知識やルールを、実際の業務で使用できる段階です。日常業務の中で情報セキュリティのルールに沿って行動し、状況に応じて必要な確認を行えることが目標になります。


「分析」は、情報や事例を要素に分け、原因や関係性を整理できる段階です。情報漏洩などの事例について、何が起きたのか、どの行動に問題があったのか、どのような条件が重なったのかを整理できることを目指します。


「統合」は、複数の知識や視点を組み合わせ、全体像の説明や提案ができる段階です。複数のルールや事例を踏まえて、自部門ではどのような点に注意すべきかを整理し、業務全体との関係を説明できることが目標になります。


「評価」は、複数の情報や選択肢を一定の基準に照らして判断し、根拠を示しながら推奨できる段階です。複数の情報漏洩対策を比較し、自社や自部門に適した方法を、理由とともに提案できる状態を目指します。


同じ情報セキュリティというテーマでも、基本ルールを覚える教材と、複数の対応策を比較して判断する教材とでは、必要な内容や問いかけが異なります。


コンテキストAIは、抽出された知識をもとに、その教材でどの段階を目指すのかを踏まえ、学習目標の案を整理します。





段階が高ければ、良い教材になるわけではない


ここで大切なのは、すべての教材で最も高い段階を目指すことではありません。

教材の目的や対象者によって、必要な到達点は異なります。


たとえば、緊急時の避難方法を教える研修では、決められたルールを正確に覚え、実際の場面で行動できることが重要です。必ずしも、避難方法を分析したり、新しい方法を提案したりする必要はありません。


一方で、管理職や専門担当者を対象とする研修では、複数の事例を分析し、状況に応じた判断や改善提案ができるところまで求められることがあります。


コンテキストAIでは、対象者レベルに応じて、入門では「記憶・理解」、実践では「適用・分析」、習熟では「統合・評価」を主な目安として学習目標を整理します。ただし、この対応は固定されたものではありません。研修の目的や資料の内容によって、重視する段階は変わります。


学習目標設計とは、できるだけ高い段階へ引き上げることではなく、その教材に必要な到達点を見極めることです。


入門者に、いきなり複雑な分析や評価を求めても、前提となる知識が不足していれば学習は進みません。反対に、経験者に基本用語の記憶だけを求めても、実務に役立つ学びにはなりにくいでしょう。


誰に向けた教材なのか、どの業務で使う知識なのか、学習後に何ができればよいのか。それらを踏まえ、適切な到達点を定めることが重要です。



資料をアップロードして、初めて見えてくるもの


実際に資料をアップロードし、生成された学習目標の分析結果を確認すると、それまでとは異なる角度から資料を見ることができます。

通常、業務資料は、情報を記録したり、手順を伝えたり、関係者の認識をそろえたりするために作られています。その資料を学習目標という軸で見直すことで、「この資料を教材にした場合、どのような学びに活用できるのか」が見えてきます。


単に手順を覚えるための資料だと思っていたものに、判断条件や注意点、過去の事例が含まれていれば、「適用」や「分析」を扱う教材の材料として使える可能性があります。

複数の部門に関係するルールや背景まで記載されていれば、知識を組み合わせて全体像を考える「統合」の学習へ展開できるかもしれません。


一方で、用語や手順だけが記載され、なぜその手順が必要なのか、どのような条件で判断が変わるのかが書かれていなければ、その資料だけで扱える学習目標には限界があります。

これは、資料が悪いということではありません。もともと、手順を確認するために作られた資料であれば、その目的は果たしています。


ただし、教材として活用する視点から見ると、何が含まれていて、何が不足しているのかが分かります。必要に応じて、担当者が背景情報や事例を補うことで、より深い学習へ展開することもできます。


学習目標設計は、教材の方向性を決めるだけではありません。社内資料に含まれている知識の深さや、教育に活用できる可能性を、改めて浮かび上がらせる工程でもあります。



目標が定まることで、その先の設計が変わる


学習目標が明確になっていないまま教材を作ると、情報を並べただけの、方向性の見えにくい教材になりがちです。


用語をどこまで詳しく説明するのか。手順を覚えてもらうだけでよいのか、実際の業務で使えるところまで求めるのか。事例を読んでもらうのか、自分で判断してもらうのか。

到達点が決まっていなければ、こうした教材設計上の判断を行う基準がありません。

反対に、「この教材を学んだ人に、最終的に何ができるようになってほしいのか」が明確であれば、どの知識を重点的に扱い、どのような順序で届けるべきかを判断するための基準ができます。


記憶を目標とするのであれば、用語やルールを整理し、正確に思い出せるようにする構成が必要です。適用を目標とするのであれば、業務場面を想定した例や演習が必要になります。分析や評価を目標とするのであれば、複数の事例や選択肢を提示し、原因や判断根拠を考える機会を設ける必要があります。


学習目標によって、教材に含める内容だけでなく、説明の深さ、問いの種類、確認方法まで変わります。

そのため、学習目標設計は、シーケンス設計やコンテンツ生成に入る前に行う必要があります。何を目指すのかを決めてから、そこへ至る道筋を組み立てる。それが、コンテキストAIにおける教材設計の考え方です。



AIが学習目標を決めるのではなく、案を示す


コンテキストAIは、アップロードされた資料に含まれる知識や関係性をもとに、学習目標の案を整理します。

ただし、AIが企業にとっての正しい学習目標を、資料だけから完全に決定できるわけではありません。


同じ資料を使う場合でも、新入社員向けの研修なのか、経験者向けの振り返り研修なのか、管理職向けの判断研修なのかによって、求める到達点は変わります。

また、資料に書かれている内容と、企業が本当に社員へ身につけてもらいたい能力が、完全に一致しているとは限りません。


そのため、コンテキストAIが提示する学習目標は、担当者が確認し、研修の目的や対象者に合わせて調整することを前提としています。

AIが資料から目標案を作り、人が事業や業務の目的に照らして判断する。この役割分担によって、資料に忠実でありながら、実際の研修目的にも合った教材へ近づけていきます。



まとめ


コンテキストAIにおける学習目標設計は、抽出した知識をもとに、その教材を通じて何を理解し、何ができるようになってほしいのかという到達点の案を整理する工程です。

当社の学習目標設計では、まず資料に使われている用語の意味を確認します。用語の前提をそろえることで、その後の手順や判断条件を、同じ意味の上で学びやすくします。


そのうえで、ブルームのタキソノミーを参考に、企業研修で扱いやすいよう独自に整理した「記憶・理解・適用・分析・統合・評価」の6段階から、教材に必要な到達点を考えます。

重要なのは、常に高い段階を目指すことではありません。対象者や研修の目的に応じて、どの段階までを目標にするのかを見極めることです。


学習目標が明確になることで、どの知識を扱い、どのような順序で届け、どのような問いや演習を用意すべきかを判断する基準ができます。

次回は、この学習目標をもとに、どのような順序で学びを組み立てていくのか、「シーケンス設計」についてご紹介します。


社内資料から教材を作る具体的な流れや活用イメージについては、コンテキストAI実践ガイドでご紹介しています。


機能やプランについては、コンテキストAIのサービスページをご覧ください。

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