研修教材を外注するとき、何を準備すればよいか。相談前に整理したい7つのこと


研修教材の制作を外部へ相談しようと思っても、「何を用意すればよいのだろう」と迷うことがあります。
完成した原稿が必要なのか。PowerPointのデザインまで決めておくのか。教材の長さや確認問題の内容も、依頼する側が考えなければならないのか。準備することが多く見えると、相談する前に手が止まってしまいます。
実際には、最初からすべてを決める必要はありません。大切なのは、きれいに整った資料を作ることより、「誰に、何を学んでもらい、仕事でどうなってほしいか」を制作する側と共有できる状態にすることです。
この記事では、社内資料を研修教材へ変えるとき、外注前に整理しておきたい七つのことを紹介します。まだ内容が固まっていない場合も、分かるところから確認してみてください。
最初から完成原稿を用意しなくてもよい
教材制作を依頼するとき、発注側が完成原稿を用意し、制作会社は画面を整えるだけだと思われることがあります。
もちろん、構成や原稿がすでに決まっていれば、画面制作から依頼することもできます。一方、社内にあるのが業務マニュアル、過去の研修資料、規程、担当者のメモだけでも、教材化の相談は可能です。
元資料の内容を確認し、対象者や学習目標を整理したうえで、教材の構成を考える方法があります。資料に書かれていない説明があれば、講師や実務担当者への聞き取りで補います。
ただし、何も伝えずに「この資料を教材にしてください」と渡すだけでは、制作する側も判断に迷います。資料のどこが重要なのか、学習者がどのような場面で使う知識なのかは、資料だけでは分からないことがあるからです。
外注前の準備とは、教材を自分たちで完成させることではありません。教材の目的と、制作に必要な情報を共有できるようにすることです。
1.誰が学ぶ教材なのか
最初に整理したいのは、教材を使う人です。
同じ業務マニュアルをもとにしても、新入社員向けと経験者向けでは、教材に入れる説明が変わります。初めて業務を担当する人には、用語や全体の流れから説明する必要があるでしょう。基本業務を経験した人へ教えるなら、例外対応や判断に迷いやすい場面を中心にできます。
対象者について、次のような情報があると教材の難しさを決めやすくなります。
所属する部門や担当業務
入社年次や業務経験
すでに知っていること
よく迷うことや間違えやすいこと
受講する人数や働く場所
「全社員向け」のように対象が広い場合は、全員に共通して必要な内容と、部門ごとに異なる内容を分けて考えます。一つの教材にすべてを入れるより、共通部分と個別部分に分けた方が学びやすい場合もあります。
2.学んだ後、何ができればよいのか
次に、教材を学んだ人に期待する変化を考えます。
「商品について理解する」「安全意識を高める」といった目的だけでは、教材に何を入れ、どのように確認すればよいかが曖昧になります。できるだけ、仕事の場面で見える行動まで具体的にします。
例えば、商品研修なら「商品の特徴を説明できる」だけでなく、「顧客の希望を聞き、合う商品を選べる」と置くことができます。情報セキュリティ研修なら、「ルールを理解する」から、「不審なメールに気づき、決められた窓口へ報告できる」まで具体化できます。
学習後の姿が見えると、教材に必要な説明や事例、確認問題も決めやすくなります。
まだ明確な目標がない場合は、現場で困っていることから考えても構いません。「同じ質問が何度も出る」「担当者によって対応が違う」「新人がこの作業で止まりやすい」といった事実が、学習目標を見つける手がかりになります。
3.教材のもとにする資料はどれか
教材の元になる資料を集めます。完成度の高い一冊にまとまっている必要はありません。
対象になるのは、例えば次のようなものです。
過去の研修で使ったPowerPoint
業務マニュアルや手順書
社内規程やルールブック
商品説明資料や営業資料
よくある質問と回答
問い合わせや失敗事例の記録
講師用のメモや発表者ノート
資料が複数あるときは、最も正しい情報が書かれている資料を中心に決めます。古い資料が混ざっている場合は、現在も使えるものと、確認が必要なものを分けておきましょう。
すべての資料を整理し直してから渡す必要はありません。ただし、「この規程を基準にする」「このPowerPointは昨年版なので、今年の変更点を反映する」といった情報があると、制作途中の手戻りを減らせます。
4.資料に書かれていない説明は何か
社内資料は、作成者や講師が説明することを前提に作られている場合があります。
PowerPointには要点だけが書かれ、詳しい背景や事例は講師が口頭で補っているかもしれません。業務マニュアルにも標準的な手順は載っていても、迷ったときの判断や例外への対応までは書かれていないことがあります。
そこで、資料を見ながら次の点を確認します。
説明するとき、いつも付け加えていること
初めて学ぶ人からよく出る質問
間違えやすい箇所や注意点
手順が変わる条件
自分で判断してよい範囲と、相談すべき範囲
過去に起きた失敗や、分かりやすい事例
すべてを文章にするのが難しければ、教材制作の打ち合わせで話せる人を決めておくだけでも進めやすくなります。資料に書かれていない知識を持つ人が誰なのか分かることも、大切な準備です。
5.誰が内容を確認するのか
教材の文章や画面を作る人と、業務内容が正しいかを確認する人は、同じとは限りません。
人事や教育担当者が制作窓口になり、現場責任者が業務内容を確認することもあります。情報セキュリティや法令に関わる教材なら、情報システム部門や法務部門による確認が必要になるでしょう。
制作を始める前に、少なくとも次の役割を決めておきます。
制作会社との連絡をまとめる人
業務内容の正しさを確認する人
最終的に公開を承認する人
複数の人がそれぞれ別の意見を伝えると、修正の方向が定まりにくくなります。社内の意見を一度まとめてから制作側へ返す方法にすると、確認を進めやすくなります。
担当者を個人名だけでなく、部署や役割でも決めておけば、異動があった後の更新にもつながります。
6.どのような形で使いたいのか
教材をどこで、どのように使うかによって、必要な納品形式が変わります。
集合研修で講師が使うPowerPointなのか、学習者が一人で見る音声付き動画なのか。社内のLMSへ登録するのか、共有フォルダや社内ポータルから見てもらうのか。確認問題を教材の中に入れるのか、別のテスト機能で実施するのかも確認します。
利用方法として、次の点を整理しておくと安心です。
集合研修、個人学習、OJTのどこで使うか
パソコンとスマートフォンのどちらで見るか
音声を再生できる環境か
字幕やテキスト原稿が必要か
LMSへ登録する形式が決まっているか
PowerPointなどの編集可能なデータも必要か
完成した教材を後から社内で更新したい場合は、編集用データの納品範囲も見積もり前に確認します。動画だけを受け取るのか、原稿や問題データも受け取るのかによって、運用のしやすさが変わります。
7.いつまでに、どの場面で使うのか
最後に、教材を使い始めたい時期を共有します。
「できるだけ早く」ではなく、「11月の新任管理職研修で使う」「新システムの稼働前に対象者へ配信する」のように、利用する場面と日付が分かると制作計画を立てやすくなります。
教材制作には、構成の確認、初稿の確認、修正、音声や動画の出力など、いくつかの工程があります。制作期間だけでなく、社内確認にかかる時間も考えておきましょう。
期限が短い場合は、内容を一つのテーマにしぼる方法があります。最初から大きな研修全体を作るのではなく、質問が多い業務や、毎回説明している内容から一本作ると、確認する範囲も小さくできます。
相談前に使える簡単な整理メモ
七つの項目を、長い企画書にまとめる必要はありません。最初の相談では、次のような一枚のメモでも十分です。
項目 | 記入例 |
対象者 | 配属後1か月以内の営業担当者 |
学習後にできること | 顧客の希望を聞き、基本商品を選べる |
元資料 | 商品説明PowerPoint、価格表、FAQ |
資料にない補足 | よくある相談例、商品を選ぶ判断基準 |
内容確認者 | 営業企画部の責任者 |
利用方法 | 配属後に一人で視聴、最後に確認問題 |
利用開始日 | 11月の新入社員配属前 |
空欄があっても問題ありません。「誰に聞けば分かるか」「制作会社と一緒に決めたいこと」と書いておけば、打ち合わせで確認できます。
このメモがあると、制作会社も必要な工程を考えやすくなり、見積もりの範囲も分かりやすくなります。
見積もりでは、準備する側と制作する側の分担を確認する
同じ教材制作でも、どこまでを社内で準備し、どこからを外部へ任せるかは案件ごとに異なります。
社内で原稿まで作る場合は、外注範囲を画面制作や音声制作にしぼれます。反対に、元資料から学習目標や構成を考えるところから依頼するなら、学習設計や聞き取りも見積もりに含まれます。
費用を比べるときは、金額だけでなく、次の分担を確認します。
学習目標を決めるのは誰か
元資料から使う内容を選ぶのは誰か
構成と原稿を作るのは誰か
内容の正しさを確認するのは誰か
音声、画面、確認問題を作るのは誰か
公開後の更新データを誰が持つのか
発注側の準備が少ない見積もりには、その分の設計や整理の作業が含まれます。金額の高低だけを見るのではなく、社内で必要になる時間も含めて比べることが大切です。
制作費を左右する項目は、「研修教材の制作費は、何で決まるのか」でも詳しく紹介しています。
AIを使っても、目的と確認者は人が決める
生成AIを使えば、元資料の要約、教材構成、説明文、ナレーション、確認問題の原案を作れます。資料の量が多い場合も、内容を整理する作業を速められます。
ただし、誰に何を学んでもらうのか、資料のどれを正式な情報として扱うのかは、自社で決める必要があります。AIが作った説明が実際の業務に合っているかを確認する人も欠かせません。
外注先がAIを使う場合は、社内資料をどのように扱うのか、生成した内容を誰が確認するのかも確認しましょう。AIで制作時間を短くすることと、確認を省くことは同じではありません。
AIは教材の原案づくりを支援できます。その土台になる目的、社内の文脈、正式な判断基準は、人が提供する情報です。
分かるところから整理すれば、教材制作は始められる
研修教材を外注するとき、完成原稿や細かな仕様をすべて用意する必要はありません。
まず整理したいのは、対象者、学習後の姿、元資料、資料にない補足、内容確認者、利用方法、利用開始日の七つです。決まっていない項目があれば、相談の中で一緒に決めることもできます。
最初の教材は、範囲を小さくすると進めやすくなります。多くの人が繰り返し質問するテーマや、担当者が毎回同じ説明をしている業務を一つ選び、一本の教材として形にします。
準備の目的は、発注前に教材を完成させることではありません。社内にある知識と、学ぶ人に必要なことを、制作する側へつなぐことです。
今ある資料から、最初の教材を一本作りたい方へ
当社では、既存の研修資料や業務マニュアルから、音声付きスライド教材と確認問題を制作する「社内資料の教材化パッケージ」を提供しています。
標準パッケージは、元資料1点をもとに、45分のオンラインヒアリング、学習設計、5〜8分の音声付き教材、確認問題5問と解説までを一つにした内容です。
まだ教材の構成や原稿が決まっていない場合も、今ある資料と教育上の課題からご相談いただけます。標準範囲で制作できるか、追加の整理が必要かを無料相談で確認します。




