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OJTで「教える人によって内容が違う」をどう減らすか。指導のばらつきを教育資産へ変える方法

  • 執筆者の写真: Adop-Context
    Adop-Context
  • 9 時間前
  • 読了時間: 11分

OJTでは、実際の仕事を経験しながら学べます。


仕事の進め方だけでなく、注意するポイントや、お客様への伝え方、困ったときの相談方法まで、現場に近い形で教えられるのが良いところです。

一方で、教える人によって内容が変わることもあります。


ある先輩は、最初に全体の流れを説明する。別の先輩は、すぐに作業を任せ、分からないところだけを教える。さらに別の先輩は、自分が失敗した経験をもとに、細かな注意点まで伝えるかもしれません。


教え方に違いがあること自体は、悪いことではないでしょう。経験のある人だからこそ伝えられる工夫や、相手の理解に合わせた教え方もあります。


しかし、安全や品質に関わることまで違っていたり、作業を終えたと判断する基準が人によって変わったりすると、学ぶ側は迷います。「前の人には、こう教わりました」という言葉が、現場で何度も出てくるようになります。


必要なのは、すべての教え方を一つにそろえることではありません。誰が教えても必ず伝える内容と、経験に応じて補う内容を分けることです。

この記事では、OJTにある指導のばらつきを整理し、現場の良さを残しながら、組織で使える教育資産へ変える方法を紹介します。



OJTのばらつきは、教える人の能力だけで起きるわけではない


OJTの内容が人によって違うと、「指導者の教え方に問題がある」と考えがちです。

けれども、原因は指導者個人だけにあるとは限りません。会社として、何を必ず教えるのか、どこまでできれば一人で任せてよいのかが決まっていなければ、指導者は自分の経験をもとに教えることになります。


仕事に慣れた人ほど、多くのことを無意識に判断しています。

書類を見る順番、相手の様子から確認すること、いつもと違う状態に気づくポイント。本人にとっては当たり前なので、教えるときに説明から抜けることがあります。


また、OJTを受ける人の経験も同じではありません。似た仕事をしたことがある人と、初めて働く人では、必要な説明の量や順番が変わります。


こうした違いが重なるため、指導者へ「同じように教えてください」とお願いするだけでは、ばらつきはなかなか減りません。まず、会社としてそろえる部分と、指導者に任せる部分を見えるようにする必要があります。



指導内容を、三つに分けて考える


OJTで教える内容は、次の三つに分けると整理しやすくなります。

分け方

内容

必ずそろえる内容

誰が教えても同じであるべき基準

目的、基本手順、禁止事項、完了基準、相談先

条件に応じて判断する内容

状況によって行動が変わるもの

例外対応、優先順位、作業の停止や報告

経験から補う内容

指導者が持つ工夫や実例

覚え方、効率的な確認方法、過去の失敗例


最初の「必ずそろえる内容」は、安全で正しく仕事を進めるための共通部分です。ここが人によって変わると、仕事の結果にも差が出やすくなります。


二つ目の「条件に応じて判断する内容」は、答えを一つに固定しにくい部分です。正解だけを教えるのではなく、何を見て、どの条件で行動を変えるのかを伝えます。


三つ目は、指導者の経験を活かす部分です。全員が同じ話をする必要はありませんが、ほかの人にも役立つ工夫があれば、教材や指導者向けの記録へ加えていきます。


三つを混ぜずに整理すれば、「ここは全員でそろえる」「ここは現場で考える」「ここは先輩の経験から学ぶ」と、学ぶ側にも分かりやすくなります。



最初は、一つの仕事だけを選ぶ


OJT全体を一度にそろえようとすると、対象が広すぎて進みにくくなります。

まずは、指導者による違いが出やすく、現場から質問も多い仕事を一つ選びましょう。新人が最初につまずきやすい作業や、間違えたときの影響が大きい業務も候補になります。


たとえば、次のような仕事です。


  • 顧客からの問い合わせを受け、担当部署へつなぐ

  • 製品の出荷前に、必要な項目を確認する

  • 社内システムへ、新しい取引先を登録する

  • 設備を起動し、通常の状態かを確認する

  • 見積書を作成し、上司へ確認を依頼する


仕事の範囲は、経験の浅い人が一度に練習できる程度にしぼります。「顧客対応全体」のように広くせず、「最初の問い合わせを受けて、次の担当者へつなぐまで」のように、始まりと終わりを決めるのがポイントです。



複数の指導者に、同じ仕事を聞いてみる


対象が決まったら、その仕事を教えている人、二人か三人に話を聞きます。

「どのように教えていますか」という広い質問だけでは、普段の説明を思い出しにくいかもしれません。実際の仕事の順番に沿って、具体的に聞いてみましょう。


  • 最初に何を確認しますか

  • 新人には、どこから説明しますか

  • よく間違えるのは、どこですか

  • どの状態なら、一人で進めてよいですか

  • どんなときに、作業を止めたり相談したりしますか

  • 自分が経験から学んだことはありますか


回答を比べると、全員が共通して教えていることと、人によって違うことが見えてきます。

違いが見つかっても、すぐにどちらかを間違いと決める必要はありません。担当する顧客、設備、商品、経験年数など、条件の違いによって教え方が変わっている可能性があるからです。


なぜ違うのかを確かめ、正式な基準なのか、現場で生まれた工夫なのか、個人だけのやり方なのかを分けます。



「作業の手順」だけでなく、五つの共通基準をそろえる


OJTの内容をそろえるとき、作業手順のチェックリストだけを作ることがあります。

もちろん、手順は大切です。ただし、順番だけが分かっても、何のために行うのか、どこまでできれば終わりなのかが分からなければ、応用はしにくくなります。

共通部分には、次の五つを入れましょう。


  1. この仕事の目的

  2. 始める前に確認すること

  3. 基本となる手順

  4. 完了したと判断する基準

  5. 自分で進めず、相談する条件


たとえば、見積書を作る仕事なら、入力方法だけでなく、「顧客の依頼内容と条件が合っている」「必要な承認を受けている」「送付前の確認が終わっている」といった完了基準が必要です。


さらに、値引きの幅が決められた範囲を超える、契約条件に不明点があるなど、本人だけで進めない条件も示します。

手順、完了基準、相談条件までそろえば、指導者が変わっても、仕事の大切な部分はぶれにくくなります。



判断が必要な場面は、答えではなく条件を残す


実際の仕事では、マニュアルどおりに進まないことがあります。


お客様が急いでいる。必要な情報が一部そろっていない。通常とは違う音がする。前回と同じ対応を求められたものの、その「前回」が何を指すのか分からない。


経験のある指導者は、こうした場面で複数の情報を見ながら判断しています。しかし、「こういうときは気をつけて」と伝えるだけでは、経験の浅い人に判断の根拠まで届きません。

判断を教えるときは、次の順番で整理します。


整理すること

確認する内容

場面

どの仕事の、どの時点か

兆候

いつもと何が違うか

確認

追加で何を調べるか

判断

続ける、調整する、止める、相談するのどれか

理由

なぜ、その行動を選ぶのか


実際に起きた例をこの形へ整えると、OJTで使える短いシナリオになります。学ぶ人へ場面と兆候を示し、「次に何を確認しますか」「このまま進めますか」と問いかければ、判断の練習ができます。


指導者によって答えが違った場合は、どの条件を見ていたのかを確認しましょう。条件の違いが分かれば、単なる教え方のばらつきではなく、状況に応じた判断として整理できます。



指導者向けには、話す台本より「確認ガイド」を作る


指導内容をそろえるために、指導者が話す言葉を細かく台本にする方法もあります。

ただ、OJTでは、学ぶ人の経験や理解に合わせて説明を変える必要があります。すべての言葉を固定すると、指導者が持つ良さや、現場での対話が失われるかもしれません。

そこで、台本ではなく、指導者向けの確認ガイドを作ります。


ガイドには、「必ず伝える内容」「実際に見せる作業」「本人にやってもらうこと」「理解を確かめる質問」「一人で任せる基準」をまとめます。


たとえば、理解を確かめるときも、「分かりましたか」と聞くだけでは十分ではありません。「この表示が出たら、次に何を確認しますか」「どの状態なら、上司へ相談しますか」と問いかければ、判断まで理解しているかを確認できます。


話し方は指導者に任せながら、学んでほしい内容と確認方法をそろえる。この形なら、OJTの柔軟さを残せます。



学ぶ側にも、到達点を見えるようにする


指導者だけが確認項目を持っていると、学ぶ人は「いつまで教わるのか」「何ができれば一人で任せてもらえるのか」が分かりません。


OJTを始めるときに、学ぶ内容と到達点を本人にも伝えましょう。


最初は先輩の作業を見て、次に一緒に行い、その後は見守ってもらいながら自分で進める。最後に、通常の仕事を一人で行い、例外が起きたときに正しく相談できるかを確認する。こうした段階が見えると、本人も自分の成長を確かめやすくなります。

「一人でできる」とは、すべてを自分だけで解決することではありません。自分の権限や経験を超える状態に気づき、必要な相手へ相談できることも、独り立ちの大切な条件です。



指導者同士で、短いすり合わせを行う


確認ガイドを作ったあとも、指導者が一度読んだだけでは、使い方の違いが残ることがあります。


最初は15分ほど集まり、一つの仕事について確認してみましょう。

「この項目を、どのように教えていますか」「この場面では、どこまで新人に任せますか」「相談が必要だと判断する線は、どこですか」と話すと、文章だけでは見えなかった違いが出てきます。


ここで大切なのは、教え方の上手い、下手を決めることではありません。仕事の基準をそろえ、それぞれが持っている良い事例や工夫を共有することです。

すり合わせで見つかった内容は、確認ガイドやシナリオへ戻します。話し合いを一度きりで終わらせず、教材を育てる機会として活かしましょう。



OJTを受けた人の声から、教材を直す


指導する側が分かりやすいと思っていても、初めて学ぶ人には説明が足りない場合があります。


OJTの区切りで、本人へ短く聞いてみましょう。

どこが分かりにくかったか。先輩によって説明が違ったことはなかったか。一人で行うときに不安なことは何か。実際の仕事で、教材にない場面はあったか。


すべての意見をそのまま教材へ足す必要はありません。複数の人が同じところで迷っている、安全や品質への影響がある、判断の条件が伝わっていないといった声から優先して見直します。


指導者と学ぶ人の両方から情報が戻れば、教材は現場の実態に近づいていきます。



AIは、指導内容の共通点と違いを整理できる


複数の指導者へ話を聞くと、記録の量が増えます。それぞれの言い方も違うため、人の目だけで共通点を探すには時間がかかるでしょう。


AIは、インタビュー記録から共通する手順をまとめ、人によって異なる説明や判断を整理する作業を支援できます。記録をもとに、確認ガイド、チェックリスト、シナリオ問題の原案を作ることも可能です。


ただし、どの方法を正式な基準にするかは、現場や業務の責任者が決めます。安全、品質、法令、顧客との契約に関わる内容は、担当部門による確認が欠かせません。


また、インタビュー記録には、顧客名や個人情報、社外へ出せない仕事の情報が含まれる場合があります。AIへ入力できる情報の範囲を決め、必要に応じて名前や固有の情報を伏せて扱いましょう。


AIに答えを決めてもらうのではなく、違いを見つけ、教材の原案へ整える作業を手伝ってもらう。この役割分担が現実的です。



教える人の経験を、組織の教育資産へ変える


OJTで教える内容が違うのは、指導者がそれぞれの経験を使っているからでもあります。


その違いをすべてなくしてしまえば、現場で積み重ねてきた工夫まで失われるかもしれません。一方、安全や品質の基準、仕事を終えたと判断する条件、相談すべき場面まで人によって変われば、学ぶ人は安心して仕事を進められません。


まずは、一つの仕事を選びます。複数の指導者から教えている内容を聞き、必ずそろえる内容、条件に応じて判断する内容、経験から補う内容の三つに分けてみましょう。


共通の手順と基準は、指導者向けの確認ガイドへ。判断が必要な場面は、実例をもとにしたシナリオへ。指導者が持つ工夫は、ほかの人も使える事例として残します。


教える人の個性を消すのではなく、仕事の大切な基準をそろえ、良い経験を組織へ広げること。それによってOJTは、担当者だけに任された教育から、使うたびに育つ教育資産へ変わっていきます。



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