生成AIで研修教材を作るとき、人が確認したい7つのこと


生成AIを使うと、研修教材の構成、説明文、ナレーション、確認問題などの原案を短い時間で作れます。これまで一から文章を考えていた教育担当者にとって、教材制作を進めやすくする心強い道具です。
ただし、読みやすい文章ができたことと、自社の社員が安心して学べる教材になったことは同じではありません。
研修教材には、会社ごとのルール、実際の業務手順、例外への対応、学習者に身につけてほしい判断などが含まれます。生成AIが作った原案を教材として使うには、こうした内容を知る人が確認し、自社の仕事に合う形へ整える工程が必要です。
この記事では、生成AIで研修教材を作るとき、人が確認したい7つのことを紹介します。AIを使うかどうかを決めるためではなく、AIと人がそれぞれの役割を持ち、教材制作を進めるための実務的な確認項目です。
誰が、どの立場から教材を確認するのかという基本的な考え方は、別の記事「AIが作った教材を、誰がどこまで確認すべきか」で整理しています。本記事では、その考え方を実際の教材確認に使える7項目へ落とし込みます。
生成AIによって、人の仕事は「全部を書く」から「確かめて整える」へ変わる
これまでの教材制作では、元資料を読み、構成を考え、説明文を書き、問題を作るまで、多くの作業を人が担ってきました。文章を書くことに慣れていない担当者にとっては、最初の一文を書き始めるだけでも時間がかかります。
生成AIは、この最初の負担を軽くできます。
たとえば、20ページの業務マニュアルから要点を取り出し、5分程度の教材構成にまとめる。専門用語をやさしい言葉に置き換える。説明した内容をもとに、選択式の確認問題を作る。このような原案づくりは、生成AIが力を発揮しやすい部分です。
一方で、どの情報を社員に学んでもらうのか、説明が実務に合っているか、答えを一つに決めてよい問題なのかは、会社や業務を理解している人でなければ判断できません。
生成AIの活用によって、人の確認がいらなくなるわけではありません。人が一から全部を書く作業を減らし、学習の目的や内容の正しさを確かめることへ、時間を使いやすくなるのです。
1.誰が、何をできるようになる教材か
最初に確認したいのは、教材の対象者と学習目標です。
同じ社内資料を使っても、新入社員向けの教材と、経験者向けの教材では、必要な説明が変わります。新入社員には言葉の意味や基本的な流れから説明する必要がありますが、経験者には例外への対応や判断の違いが重要になるかもしれません。
生成AIへ元資料だけを渡して「研修教材を作ってください」と頼むと、資料全体をまんべんなく要約した内容になりやすくなります。しかし、資料に書かれていることをすべて紹介するのが、研修の目的とは限りません。
原案を見るときは、次の二つを一文で言えるか確認します。
誰が学ぶ教材なのか
学んだ後、どのような場面で何ができればよいのか
たとえば、「新しく顧客対応を担当する社員が、問い合わせの内容を確認し、担当部署へ正しくつなげられるようになる」と決めます。すると、制度の歴史よりも、確認する項目、判断の分かれ目、連絡先などを優先すべきだと分かります。
教材の良し悪しを確認する基準は、文章の上手さだけではありません。目指す行動へ向かう内容になっているかが大切です。
2.元資料は、今も正しいか
生成AIが元資料を正確に読み取っても、元資料そのものが古ければ、できあがる教材も現在の業務とずれてしまいます。
教材化の前には、資料の作成日や更新日、現在の担当部署を確認します。規程、システム画面、商品情報、問い合わせ先など、変わりやすい部分は特に注意が必要です。
複数の資料を使う場合、書かれている内容が食い違うこともあります。古いマニュアルには以前の手順があり、新しい社内通知には変更後の手順が書かれている、といった場合です。このとき、生成AIが自動的にどちらを正式な情報と判断できるとは限りません。
まず人が、教材の根拠にする資料を決めます。内容が変わりやすい教材では、元資料、確認した人、確認日も一緒に記録しておくと、次の更新がしやすくなります。
3.資料にない説明が加わっていないか
生成AIは、文章の流れを自然にするため、元資料に書かれていない背景や具体例を補うことがあります。その説明が一般的にはもっともらしくても、自社の業務に合うとは限りません。
たとえば、資料に「必要に応じて上長へ報告する」と書かれていたとします。生成AIが「顧客から苦情があった場合は、営業部長へ報告します」と具体化しても、自社では品質管理部門や専用窓口へ連絡する決まりかもしれません。
確認するときは、文章ごとに細かく疑うより、次のように分けると進めやすくなります。
元資料に書かれている事実
担当者への聞き取りで補った内容
分かりやすくするために作った例
追加の確認が必要な内容
特に、数値、期限、担当部署、禁止事項、報告先は、元資料と照らして確認します。具体例を加える場合は、「実際に起こり得る場面か」「その対応を社内で勧めてよいか」を実務担当者が確かめます。
4.自社固有の判断や例外が入っているか
業務マニュアルには標準的な手順が書かれていても、現場で迷いやすい場面までは書かれていないことがあります。
どの程度の異常なら作業を止めるのか。顧客からどのような言葉が出たら、別の担当者へつなぐのか。通常の申請と緊急時の申請は、どこで判断が分かれるのか。こうした判断は、経験者の中に残っている場合があります。
元資料だけを読み取る生成AIは、資料にない判断基準までは知りません。一般的な対応を提案することはできても、その会社で安全に使える基準にするには、人から情報を加える必要があります。
教材の初稿を見ながら、現場の担当者へ次のように聞いてみます。
新しい担当者が、ここで迷うことはありますか
この手順をそのまま進めてはいけない場合はありますか
自分で対応してよい範囲は、どこまでですか
誰かへ相談するとき、何を伝える必要がありますか
こうして得た内容を、説明、事例、確認問題へ加えると、読むための資料から、仕事で判断するための教材へ近づきます。
5.入力してよい情報の範囲を守っているか
社内資料には、個人情報、顧客情報、取引条件、未公開の商品情報などが含まれることがあります。教材を作る前に、利用する生成AIの環境と、入力してよい情報の範囲を確認します。
会社が認めたサービスか。入力した情報が、どのように保存・利用されるのか。個人名や顧客名を削除する必要があるか。利用者ごとに権限を分けられるか。これらは、便利な機能を試す前に決めておきたい項目です。
資料をそのまま入力できない場合でも、必要な部分を抜き出し、固有名詞や数値を置き換えて原案を作る方法があります。あとから担当者が正式な内容へ戻せるように、置き換えた箇所を分かるようにしておきます。
社内資料を生成AIへ入力する際の確認については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
6.確認問題が、説明した内容と仕事につながっているか
生成AIは、教材本文から短時間で確認問題を作れます。ただし、作りやすい問題と、学習者の力を確かめられる問題は、必ずしも同じではありません。
たとえば、本文に出てきた言葉を覚えているかだけを問う問題は作りやすい一方、実務で適切に判断できるかまでは分かりません。
顧客対応の教材なら、用語の意味だけでなく、具体的な問い合わせを示し、最初に何を確認するかを考える問題が役立ちます。安全教育であれば、規程の番号を答える問題よりも、異常の兆候に気づき、続行、停止、報告のどれを選ぶかを問う方が、仕事に近い確認になります。
問題を確認するときは、次の点を見ます。
教材の中で説明したことから答えられるか
正解が一つに決まる条件がそろっているか
誤った選択肢にも、選ばれそうな理由があるか
正解と不正解の理由が説明されているか
学習目標に合った理解や判断を確かめているか
問題数を増やすことよりも、学んでほしい内容を確かめられる問題になっているかが重要です。
7.誰が最終確認し、いつ見直すか
生成AIが作った教材を公開する前に、最終的な確認者を決めます。
文章を整える人と、業務内容が正しいかを判断する人は、同じでなくてもかまいません。教育担当者が構成や分かりやすさを確認し、現場責任者が手順や判断基準を確認するなど、役割を分ける方法があります。
安全、品質、法令、契約に関わる内容は、必要に応じて所管部門にも確認してもらいます。「AIが作ったから誰が責任を持つのか分からない」という状態にせず、公開を認める人を明確にしておきます。
確認する人の役割や、教材の重要度に応じて確認の厚さを変える考え方については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
公開後の見直しも大切です。規程や商品が変わったときだけでなく、同じ質問が繰り返されたとき、確認問題の同じ箇所で誤答が多いときも、教材を改善するきっかけになります。
教材名、元資料、確認者、最終確認日、次回確認日を記録しておけば、作った教材を安心して使い続けやすくなります。
7つの確認を、一枚の表で進める
生成AIで初稿を作ったら、次の表を使って確認できます。すべてを一人で確認するのではなく、内容に応じて担当者を分けます。
確認すること | 主な問い | 確認する人の例 |
対象者と学習目標 | 誰が、何をできるようになるか | 教育担当者、上司 |
元資料の新しさ | 現在の正式な情報か | 資料の所管部門 |
AIが加えた説明 | 根拠のない内容が混ざっていないか | 実務担当者 |
判断と例外 | 現場で迷う条件が含まれているか | 経験者、現場責任者 |
情報の取り扱い | 入力してよい情報か | 情報システム、管理部門 |
確認問題 | 学習目標と仕事につながっているか | 教育担当者、実務担当者 |
公開と更新 | 誰が承認し、いつ見直すか | 所管部門、教材管理者 |
最初から大がかりな確認会議を設ける必要はありません。教材の目的と影響に合わせ、必要な人が必要な箇所を見る流れを決めます。
小さな教材を一本作ると、役割分担が見えてくる
生成AIを教材制作に取り入れるとき、最初からすべての研修を変えようとすると、入力ルールや確認体制を決めるだけでも負担が大きくなります。
まずは、対象者と目的が明確な一つのテーマを選びます。毎年同じ説明をしている内容、同じ質問が繰り返される業務、元資料が比較的新しいテーマなどは、最初の候補にしやすいでしょう。
一本の教材を作ると、AIへ渡す前に資料を整える人、業務内容を確認する人、学習者へ届ける人が見えてきます。どこに時間がかかり、どの情報が不足していたかも分かります。
その経験を次の教材へ戻すことで、自社に合った制作の流れを少しずつ整えられます。生成AIの導入は、教材を速く作ることだけが目的ではありません。社内にある知識を見つけ、確かめ、社員が学べる形で残していく仕組みを作る機会にもなります。
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2026年10月14日(水)14:00~15:00
2026年10月23日(金)14:00~15:00
2026年10月28日(水)16:00~17:00
開催方法:Zoomウェビナー


