お客様から社員教育の相談を受けたとき、提案前に確認したい5つのこと


お客様から、「新人教育が担当者任せになっている」「マニュアルはあるが、社員が使いこなせていない」「同じ説明を何度も繰り返している」と相談されることがあります。
こうした悩みを聞く機会があるのは、研修会社だけではありません。IT支援会社、システム会社、コンサルティング会社、業務改善を支援する会社など、お客様の仕事をよく知る立場だからこそ、教育の困りごとに気づく場合があります。
ただ、相談を受けても、すぐに研修の提案へ進めるとは限りません。どこに教育の負担があるのか、誰に何を学んでもらうのか、どこまでを自社で支援するのか。最初に整理したいことがいくつかあります。
この記事では、お客様から社員教育や知識共有の相談を受けたとき、提案前に確認したい5つのことを紹介します。
教育の相談は、別の課題の中に隠れている
お客様から、最初から「社内教材を作りたい」と相談されるとは限りません。
「新しいシステムを入れたが、現場で使い方がそろわない」「問い合わせが特定の担当者へ集まっている」「拠点によって作業のやり方が違う」といった話の中に、教育の課題が含まれていることがあります。
たとえば、システムの操作方法を伝えるだけなら、操作マニュアルで対応できるかもしれません。しかし、どの機能をどの場面で使うのか、入力内容をどう判断するのかまで必要であれば、読む資料に加えて、事例や確認問題を含む教材が役立ちます。
業務改善の相談でも同じです。新しい手順を決めても、社員が理由を理解し、実際の仕事で選べるようになるまでには、学ぶ機会が必要になります。
提案の入口は、「教材を作りませんか」と持ちかけることではなく、お客様の仕事で何が起きているかを丁寧に聞くことです。そのうえで、知識や判断の共有が助けになる部分を一緒に見つけていきます。
確認1|どこで教育の負担が生まれているか
最初に確認したいのは、誰が、どのような説明を繰り返しているかです。
新人が入るたびに同じ内容を教えている。新しい機能を公開するたびに、担当者が説明会を開いている。お客様対応で判断に迷うと、いつも同じ経験者へ質問が集まる。このような場面には、教材化する価値のある知識が含まれています。
次のような質問をすると、負担が見えやすくなります。
誰から、どのような質問が多く寄せられていますか
同じ説明を繰り返している業務はありますか
担当者によって、教える内容に違いはありますか
説明を受けた後も、迷いやすい場面はどこですか
教育する人の異動や退職で、困りそうなことはありますか
ここで大切なのは、説明回数を減らすことだけを目的にしないことです。社員が必要な知識を理解し、自分で判断できるようになれば、教える側の負担を軽くしながら、仕事の質もそろえやすくなります。
確認2|教材のもとになる資料や記録があるか
教材化の相談では、「研修資料はありません」と言われることがあります。その場合も、教材のもとになる情報を、お客様と一緒に探すことができます。
業務マニュアル、PowerPoint、社内規程、商品資料、システムの操作手順、問い合わせ履歴、会議で使った説明資料など、仕事のために作られた資料を確認します。担当者が個人的に作ったメモや、よくある質問への回答も手がかりになります。
このとき扱うのは、お客様が教材化の対象として選び、共有範囲を確認した資料だけです。
利用目的、閲覧できる人、保管方法を事前に決め、機密情報や個人情報を含む資料は、必要に応じて削除や置き換えを行います。社内資料だからこそ、内容だけでなく、扱い方にも合意が必要です。
資料が少ない場合は、実務担当者への短い聞き取りから始めることもできます。「新人へ最初に何を説明していますか」「どこでよく迷いますか」「一人で任せられるのは、何ができるようになったときですか」と尋ねると、教えるべき内容が見えやすくなります。
反対に、資料が多い会社では、すべてを一度に教材へ変えようとすると範囲が広がりすぎます。利用頻度が高い業務や、特定の人へ質問が集まっているテーマから、一つを選ぶ方が進めやすいでしょう。
最初の対象を選ぶ考え方は、教育資産化は、どの業務から始めるべきか。最初の対象を選ぶ5つの判断基準でも紹介しています。
確認3|誰が、何をできるようになる教材か
元資料が見つかったら、すぐにスライドへ整えるのではなく、学ぶ人とゴールを決めます。
同じ業務マニュアルを使う場合でも、新入社員向けの教材と、経験者向けの教材では内容が変わります。新入社員には基本の流れが必要ですが、経験者には例外への対応や判断の分かれ目が役立つかもしれません。
ゴールも、「内容を理解する」だけでなく、仕事の場面が分かるように表します。
たとえば、「新しい申請制度を理解する」より、「自分の申請に必要な書類を選び、期限までに提出できる」とした方が、教材に含める説明や確認問題を決めやすくなります。「お客様対応を学ぶ」であれば、「問い合わせ内容を整理し、自分で回答できるものと、専門部署へつなぐものを選べる」と具体化できます。
誰が、どの場面で、何をできるようになるのか。この三つが決まると、元資料のどこを使い、何を補うべきかが見えてきます。
資料から教材を組み立てる手順は、社内資料を研修教材にする方法。教材化の8つの手順とAI活用のポイントで詳しく解説しています。
確認4|お客様と提案側で、どの役割を持つか
お客様の知識を教材へ変えるときは、すべてを提案する会社だけで完成させる必要はありません。それぞれが持つ知識を生かして、役割を分ける方法があります。
お客様は、自社の業務、ルール、判断基準を知っています。提案する会社は、お客様が抱える課題や、導入しているシステム、これまでの支援経緯を理解しています。教材制作を支援する会社は、学習目標、構成、説明、音声、確認問題などを、学べる形へ整えます。
たとえば、次のように分担できます。
役割 | 主に担当すること |
お客様 | 対象資料と共有範囲の決定、業務内容の説明、事実確認、最終承認 |
提案・支援会社 | 課題の整理、対象業務の選定、お客様との進行、活用場面の提案 |
教材制作の支援者 | 学習設計、教材構成、原稿、音声、確認問題の制作 |
実際の分担は、案件や各社の得意分野によって変わります。提案する会社が教材制作の専門家になることより、お客様の課題と、教材化を支援できる相手をつなぐことが大切です。
あらかじめ、誰が内容の正しさを確認するのか、修正の取りまとめを誰が行うのか、完成後に誰が社員へ案内するのかまで決めておくと、制作後の活用へつなげやすくなります。
確認5|最初の一つを、どこまで小さくできるか
教育課題が多い企業ほど、最初から全社共通の大きな研修を考えたくなるかもしれません。
しかし、初回は一つの対象者、一つの業務、一つの学習目標に絞ると、お客様も完成形を確認しやすくなります。
たとえば、「新入社員教育をすべて作る」ではなく、「経費申請で差し戻しが多い三つの場面を学ぶ教材」にします。「お客様対応を標準化する」ではなく、「契約内容に関する問い合わせを受けたときの確認と連携」に範囲を限ります。
小さな教材を一つ作れば、受講者が理解しやすいか、確認問題で迷う箇所はどこか、業務で使える内容になっているかを確かめられます。そこで得た反応を、次の教材へ生かせます。
最初の教材の範囲や長さを決める際は、最初の研修教材は、何分・何ページがよいか。小さく始める教材設計も参考になります。
教材化の提案が合いやすいケース
教育施策を考えやすいのは、すでに仕事の中に知識や資料があり、それを学ぶ仕組みをこれから整えたい場合です。
たとえば、マニュアルはあるものの新人が一人で読み進めにくい、担当者が毎回同じ説明をしている、制度やシステムの変更を多くの社員へ伝えたい、といった状況です。拠点や担当者によって教え方が変わりやすい場合にも、共通教材が役立ちます。
一方、業務そのものが固まっていない段階では、先に手順や役割を整理する必要があります。また、法務・医療・高度な技術分野など、専門的な確認が欠かせない内容では、お客様側の責任者や専門家による監修を制作計画へ組み込みます。
教材を作ることが目的ではありません。学ぶ方が内容を理解し、仕事の中で使える状態を作れるかどうかを基準に考えます。
お客様を知る会社だからこそ、教育の入口を見つけられる
お客様を日頃から支援している会社は、その会社の業務、利用している仕組み、現場で起きている困りごとに触れています。そこには、教材だけを単独で提案する場合には見つけにくい情報があります。
システム導入後の問い合わせが減らない。新しい業務手順が現場へ広がりにくい。経験者の説明に頼る場面が多い。こうした兆候に気づいたとき、教育という選択肢を加えることで、導入や業務改善の効果を支えられる場合があります。
提案する側が、教材をすべて作れる必要はありません。お客様と課題を整理し、教材化できる情報を確認して、学ぶ人と目標を定める。そこから先は、学習設計や教材制作を担う会社と一緒に進めることもできます。
お客様の許可を得て選んだ資料や知識を、社員が学び、判断や行動に使える教育資産へ整えていく。その入口を作れることは、これまでの支援に加えられる新しい価値の一つです。
お客様への教育施策をご検討の方へ
当社では、社内資料や現場のノウハウをもとに、学習目標、教材構成、説明、音声、確認問題を組み立てる教材化を支援しています。
お客様へのご提案や、自社サービスと組み合わせた支援をご検討の方は、対象となる課題や役割分担を伺いながら、どのような進め方が可能かをご相談いただけます。資料の取り扱いについても、お客様の許可と合意した範囲を前提に進めます。


