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「教材にする資料がない」会社は、社員教育をどこから始めるか。学習できる環境の作り方

  • 執筆者の写真: Adop-Context
    Adop-Context
  • 3 分前
  • 読了時間: 13分

先日、ある企業へコンテキストAIをご紹介した際、「教材にするような資料は、特にありません」というお話がありました。


業務マニュアルや研修用のPowerPointがそろっていなければ、教材化するものはないと感じるのも自然です。現状の仕事が問題なく進んでいるなら、改めて社員教育の仕組みを作る必要性も、すぐには感じにくいかもしれません。


ただ、その言葉を聞いて、私は一つのことを考えました。


社会、顧客、技術、制度が速いスピードで変わる今、現在の仕事をこなせていることと、これからの変化へ対応できることは同じではありません。新しい知識が必要になったとき、社員が学べる環境があるか。分からないことを確かめ、仕事へ取り入れられる状態になっているか。これからは、その違いが企業の力に表れてくるのではないでしょうか。


大切なのは、立派な研修資料をたくさん持っていることではありません。必要なときに学び、知識を仕事へつなげ、変化に合わせて学び直せる環境があることです。


この記事では、「教材にする資料がない」と感じる会社が、社員教育をどこから始めればよいのかを考えます。



資料がないことと、社内に知識がないことは違う


研修資料やマニュアルが見当たらなくても、社内に知識がないとは限りません。

新人が質問すると、先輩が仕事の流れを説明する。顧客から難しい相談を受けると、経験のある担当者が確認すべき点を教える。問題が起きれば、関係者が集まり、原因と次の対応を話し合う。こうした日々のやり取りの中で、社員は仕事を覚えています。


つまり、知識は「資料」という形になっていないだけで、会話、経験、判断、仕事の記録の中に存在しています。


たとえば、次のようなものも教材の材料になります。


  • 新人へ繰り返し説明していること

  • 顧客からよく受ける質問と、その回答

  • 仕事で起きた失敗や、うまく対応できた事例

  • 会議で共有された注意点や方針

  • 担当者が自分のために残しているメモ

  • メールやチャットで行われた確認と判断

  • 外部のニュースや制度変更を、自社の仕事へ当てはめた説明


最初から完成された教材がなくても、学ぶべき内容の材料は、日常業務の中にあります。まず必要なのは、その材料に気づき、次の人が学べる形へ少しずつ整えることです。



今、仕事ができていても、明日も同じとは限らない


長く同じ方法で仕事が進んでいると、改めて学ぶ必要性を感じにくいことがあります。経験のある社員が対応でき、分からないことがあれば周囲へ聞ける。その状態で、大きな問題が起きていない会社もあるでしょう。


一方で、外部の変化は会社の都合を待ってくれません。


生成AIをはじめとする新しい技術が仕事へ入り、顧客が求めることも変わっています。法令や業界のルールが更新され、新しい商品やサービスへの理解も必要になります。人の異動や退職によって、これまで質問できた相手がいなくなることもあります。


変化が起きてから、急いで資料を探し、研修を作ろうとしても、必要な知識が整理されていなければ時間がかかります。知識を持つ人が忙しければ、教える時間も十分に取れません。


反対に、日頃から小さく学ぶ環境があれば、新しい状況にも対応しやすくなります。変更点を短い教材へ加え、必要な人が学び、理解できたかを確認する。現場から新たな質問が出たら、その内容を次の教材改善へ戻す。この循環がある会社は、変化のたびに教育を一から作り直さずに済みます。


社員教育は、今ある仕事を覚えてもらうためだけのものではありません。会社と社員が、これからの変化へ対応するための準備でもあります。



「研修を行うこと」より、「学習できる環境」を考える


社員教育という言葉から、会議室に社員を集め、講師が説明する研修を思い浮かべる方もいるでしょう。もちろん、対面で学ぶ時間には大きな価値があります。


ただ、変化が続く中で、すべての学びを年に数回の研修だけで支えるのは難しくなっています。新しい知識が必要になるたびに、講師、会場、日程をそろえることは簡単ではありません。


そこで、研修の回数だけでなく、社員が普段の仕事の中で学習できる環境を考えます。

学習できる環境には、少なくとも次の四つが必要です。

必要なもの

どのような状態か

学ぶ内容

今の仕事や変化に必要な知識が整理されている

学ぶ機会

必要な人が、必要な時期に利用できる

確かめる機会

読んだだけでなく、理解や判断を確認できる

改善する流れ

質問や変更を教材へ戻し、内容を更新できる


資料を保管する場所だけを作っても、学習環境にはなりません。社員が何を学び、どの場面で使い、分からなかったことをどこへ戻すのかまでつながっていることが大切です。

一度作った教材を配って終わるのではなく、使いながら育てる。その考え方があれば、最初に用意する教材は一つでも構いません。



社員教育は、会社が今向き合っている変化から始める


資料が少ない会社では、社内全体の知識を調べるところから始めなくても構いません。今、会社や現場が向き合っている変化を一つ選びます。


たとえば、次のような変化です。


  • 新しいシステムや生成AIを導入した

  • 新商品や新しいサービスの提供を始めた

  • 顧客から今までにない質問が増えた

  • 法令、規程、セキュリティルールが変わった

  • 新入社員や中途入社者が増えた

  • 経験者の異動や退職を予定している

  • 部署や拠点によって仕事の進め方に違いが出ている


この中から、「社員が知らないままだと、仕事で困ること」を一つ選びます。


たとえば生成AIを導入したなら、機能の紹介だけでなく、どの業務で使うのか、入力してよい情報は何か、生成された回答をどう確かめるのかを学ぶ必要があります。新商品を扱うなら、仕様の暗記に加え、どの顧客に適しているのか、質問されたときに何を確認するのかも重要です。


教育の出発点を「手元にどんな資料があるか」だけで決めると、資料がない時点で止まってしまいます。「これから、社員に何ができるようになってほしいか」から考えれば、必要な知識を集める方向が見えてきます。



学ぶ材料は、日常業務の五つの場所から見つける


テーマが決まったら、教材の材料を探します。立派な資料を新しく作る前に、日々の仕事の中にある情報を集めてみましょう。


1.繰り返されている説明


新人や別部署の社員へ、何度も同じことを説明している業務は、教材化の候補です。

「この画面では何を入力するのか」「この問い合わせは誰へつなぐのか」「この作業で最初に確認することは何か」。一つひとつは短い説明でも、何度も繰り返されているなら、多くの人に必要な知識だと考えられます。


説明する人へ聞き取りを行い、よくある質問と回答を整理するだけでも、最初の教材を作れます。


2.顧客や現場からの質問


質問には、説明が不足していることや、判断に迷いやすい場所が表れます。

顧客から同じ質問を受けているなら、商品説明や対応方法を学ぶ材料になります。社員からの質問が続いているなら、マニュアルに書かれていない前提や例外があるのかもしれません。


回答だけを残すのではなく、「どの状況で出た質問か」「回答する前に何を確認したか」「なぜその対応を選んだか」まで整理すると、別の場面にも使える知識になります。


3.うまくいった事例と、迷った事例


成功した仕事には、ほかの社員が学べる工夫があります。一方、失敗や迷いが生じた仕事には、次に注意すべき兆候や判断の分かれ目があります。


事例を教材にするときは、誰かの責任を追及する形にしません。何が起き、どの情報を確認し、どの時点で対応を変えられたかに焦点を当てます。


結果だけでなく、判断の過程を残すことで、事例は「昔こんなことがあった」という記録から、「同じ状況でどう考えるか」を学ぶ教材へ変わります。


4.会議や打ち合わせで決まったこと


会議では、新しい方針や対応方法が共有されます。しかし、参加していない人には伝わらず、議事録を読んでも背景が分からないことがあります。


決まったことだけでなく、変更の理由、対象となる人、仕事のどこが変わるのかを短く整理しましょう。具体的な場面と確認問題を加えれば、単なる連絡から学習へ変えられます。


5.外部から得た新しい情報


社内に資料がない場合、外部のニュース、法令、製品情報、セミナーなどから学ぶこともあります。ただし、外部情報をそのまま社員へ配るだけでは、自社の仕事との関係が伝わりにくいかもしれません。


「当社のどの業務に関係するか」「これまでと何が変わるか」「社員にどの行動を求めるか」を加えることで、外部の情報を自社の学びへ変えられます。



最初の教材は、小さく作って使ってみる


学習環境を作ろうとすると、研修体系や年間計画を最初に完成させたくなるかもしれません。しかし、現場のニーズがまだはっきりしていない段階では、小さな教材を一つ作り、実際に使ってみる方が進めやすくなります。


最初の教材は、次の流れで作れます。


1.一つの仕事と対象者を決める


「営業部全体の教育」のように広げず、「新しく配属された営業担当者が、初回の顧客訪問で確認すること」のように絞ります。


2.詳しい人へ短く話を聞く


普段どのように対応しているかだけでなく、新人が迷う場所、よくある失敗、相談が必要な条件を確認します。過去のメール、チャット、画面、メモがあれば、一緒に見ながら聞くと具体的になります。


3.説明、事例、確認問題へ組み直す


仕事の目的と基本的な流れを説明し、具体的な場面を一つ加えます。最後に、「この場合、最初に何を確認するか」といった短い問題を置けば、理解できたかを確かめられます。


4.数名に使ってもらい、直す


対象者に近い社員へ使ってもらい、分からなかった言葉や、もっと知りたかったことを聞きます。出てきた質問を教材へ加えれば、次に学ぶ人には、より分かりやすい内容になります。


最初から完成度の高い教材を目指す必要はありません。仕事で使い、質問を受け、少しずつ直せることの方が、学習環境を続けるうえでは大切です。


社内資料を教材へ組み直す具体的な流れは、「社内資料を研修教材にする方法。教材化の8つの手順とAI活用のポイント」でも紹介しています。



資料を作ることが目的にならないようにする


教材がないと聞くと、まずPowerPointやマニュアルを作ろうと考えがちです。もちろん、知識を整理して資料へ残すことは重要です。


ただ、資料の完成をゴールにすると、共有フォルダへ保存したまま使われなくなることがあります。社員がどこにあるか知らない、読んでも理解を確かめる機会がない、内容が古くなっても更新する人が決まっていない。そのような状態では、資料が増えても学習環境は育ちません。


教材を作る前に、次の点を考えます。


  • 誰が、どの仕事のために学ぶのか

  • いつ学んでもらうのか

  • 理解できたかを、どう確かめるのか

  • 仕事で出た質問を、誰が教材へ戻すのか

  • 内容が変わったとき、誰が確認するのか


教材は、学習できる環境を支える一つの要素です。作る、届ける、確かめる、直すという流れがつながって、初めて社内の知識が使われ続けます。


業務マニュアルがあっても社員教育に使われない理由は、「業務マニュアルが社員教育に使われない5つの理由。仕事で使える教材へ変える方法」で詳しく解説しています。



学習する環境が、会社の変化を支える


当社のお客様である株式会社くららぼでは、既存のルールブックや情報セキュリティ資料から、全社員向けの学習コースを試作しました。


くららぼ社が正式導入を決めた理由は、教材を一つ作ることだけではありません。まず全社員に必要な基礎をそろえ、その後は一人ひとりが専門分野の知識を高められる教育体系を目指しています。過去の勉強会資料や、先輩が現場で得た経験も、次の社員が学べる教材へ変えていく方針です。


印象的なのは、完成した資料があるから教育を行うのではなく、会社として人を育て、変化していくために、社内の知識を学べる形へ整えていることです。


教材を作ることは、その入口にすぎません。社員が学び、理解を確かめ、新しい知識を仕事で使う。そこから生まれた質問や経験を、次の学びへ戻していく。この循環が動き始めると、教育は年に一度の行事ではなく、会社が変わり続けるための日常の仕組みになります。

くららぼ社の取り組みは、「株式会社くららぼ様のコンテキストAI導入事例」で詳しく紹介しています。



AIは、何もないところから自社の知識を作るわけではない


生成AIを使えば、説明文や確認問題の原案を短い時間で作れます。しかし、会社が大切にしている判断、現場で起きている変化、顧客とのやり取りを、AIが何もないところから正確に作れるわけではありません。


一方で、情報が完成した資料になっている必要もありません。


短いメモ、会議で決まったこと、よくある質問、担当者へのインタビューなどを整理すれば、教材の材料になります。AIは、それらから重要な知識を取り出し、学習目標、学ぶ順序、説明、確認問題の原案へ展開する作業を支援できます。


人が行うのは、自社で何を大切にするかを決め、内容が実務に合っているかを確認することです。AIは、散らばった知識を学べる形へ整える作業を助けます。


「資料がないから使えない」のではなく、日々の仕事にある知識を見つけ、少しずつ材料にする。その考え方があれば、社員教育の入口は広がります。



最初に用意するのは、大量の資料ではなく、一つの学ぶ機会


「教材にする資料がない」という状態から社員教育を始めるとき、最初に大量の資料を作る必要はありません。


今、会社が向き合っている変化を一つ選ぶ。社員が知るべきこと、判断すべきことを、詳しい人と一緒に整理する。それを小さな教材へ変え、必要な人に使ってもらう。分からなかったことがあれば、次の改善へ戻します。


この小さな循環が、学習できる環境の始まりです。


現在の仕事が順調に進んでいることは、大切です。ただ、社会や顧客が変わる中で、これまでの知識だけで仕事を続けられるとは限りません。変化が起きたときに、社員が新しいことを学び、自分の仕事へつなげられる環境があるか。その準備が、これからの会社を支えます。


当社では、社内資料や現場の経験を、社員が理解し、判断や行動に活かせる形へ変え、継続的に使う取り組みを「教育資産化」と呼んでいます。


教育資産化は、すでに多くの教材を持つ会社だけのものではありません。まだ資料になっていない日々の知識を、一つずつ学びへ変えることから始められます。



自社の教育と知識共有の現在地を確認する


教材やマニュアルが少なく、社員教育をどこから始めればよいか分からない。教育の必要性は感じているものの、最初の一歩を決められない。そのような方は、無料の「教育資産化診断」をご利用ください。


約3分で、自社の現在地と、次に考えたいテーマを確認できます。




教育資産化の考え方を詳しく見る


社内資料や現場のノウハウを、社員が理解し、判断や行動に活かせる教育資産へ変える考え方を紹介しています。




資料が少ない段階から、学習環境を作りたい方へ


コンテキストAIでは、PowerPointやPDFなどの資料だけでなく、現場の説明や経験から整理したテキストも、教材づくりの材料として活用できます。

知識の整理、学習目標、教材構成、説明文、音声ナレーション、確認問題の原案作成を支援し、学習者へ配信した後は、受講状況や確認テストの結果を確認できます。

教材にする材料を見つけるところから、当社へご相談いただけます。




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