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AIで教材制作はどこまで効率化できるのか。従来工程と比べて見えること


生成AIを使うと、社内資料の要約や教材構成の作成、説明文、ナレーション、確認問題の生成まで、短時間で進められるようになります。


これまで教材制作では、資料を読み込み、必要な情報を抜き出し、構成を考え、文章を書くという作業に多くの時間がかかっていました。AIは、こうした制作工程の負担を軽減する手段として期待されています。


当社が従業員教育に関わる担当者および経営者250名を対象に実施した調査では、AIを教材制作に活用する場合に期待することとして、「教材の更新を効率化できる」が37.6%、「教材制作にかかる時間を短縮できる」が37.2%となりました。


これらの数値は、AI導入による実測結果ではなく、回答者が感じている期待を示したものです。実際にどの程度効率化できるかは、元資料の状態、教材の目的、確認体制などによって変わります。


そこで、従来の教材制作とAIを活用した制作を工程ごとに比べながら、短縮しやすい作業と、人が引き続き担う判断を整理します。



元資料の準備は、AIを使っても必要になる


従来の教材制作では、担当者が社内から関係資料を集め、どの資料を教材の根拠として使うのかを確認します。複数の版が存在する場合は、管理部門へ問い合わせ、最新の情報を特定しなければなりません。


AIを活用する場合も、この工程の重要性は変わりません。AIは入力された資料をもとに教材を作りますが、その資料が正式なものか、最新のものかを自ら保証する立場にはないためです。


複数の資料に異なる情報が記載されている場合、AIは内容の違いを抽出したり、矛盾の可能性を示したりできます。ただし、どちらを正しい情報として採用するかは、資料を管理する部門や業務責任者が判断します。


AIによって確認作業を支援することはできますが、元資料を整えずに教材制作を始められるようになるわけではありません。むしろ、短時間で多くの教材を作れるからこそ、使用する情報の信頼性が重要になります。



情報の抽出と整理は、AIが支援しやすい


従来は、担当者が元資料を読み込み、教材に必要な部分へ印を付け、別の文書へ転記しながら情報を整理していました。資料が長くなるほど、重要な箇所を見落とさずに確認するための時間が必要になります。


AIは、資料の要点、重要語句、手順、注意事項などを抽出し、一定の形式に整理できます。対象者や学習目的を指定すれば、それに関係する情報を中心にまとめることも可能です。

例えば、同じ製品説明資料から、新任営業担当者向けには基本的な特徴と顧客への確認事項を抽出し、技術担当者向けには仕様や導入条件を中心に整理するといった使い分けが考えられます。


従来は担当者が一つずつ行っていた情報整理の原案をAIが作ることで、人は内容の不足や優先順位の確認に集中できます。


一方、どの情報が実務上重要なのかは、資料の記載量だけでは決まりません。資料では短く扱われていても、現場では重要な判断基準になっている場合があります。AIによる抽出結果を出発点として、業務を知る人が重要度を確認する工程が必要です。



構成案は早く作れるが、学習の順序は人が決める


従来の教材制作では、抽出した情報をどの順序で説明するかを考え、章立てや画面構成を作ります。白紙の状態から複数の構成案を考えるには、教材設計の経験と時間が必要でした。

AIを使えば、対象者、学習目標、想定時間などの条件から、構成案を短時間で作成できます。異なる切り口の案を複数出し、比較しながら選ぶこともできます。


これにより、担当者は構成案を一から作る作業よりも、どの構成が受講者に合っているかを判断することへ時間を使えるようになります。


ただし、AIが提案した構成は、元資料の情報を整理した目次になっている場合があります。受講者が理解しやすい順序になっているか、学習後に求める行動へつながっているかは、別の観点から確認しなければなりません。


商品資料の章立てが「機能、仕様、価格」であっても、営業教育では「顧客課題を聞く、適合性を判断する、特徴を説明する」という順序が適していることがあります。こうした学習の設計は、教育目的と実務を理解する人が担います。



説明文やナレーションの原案作成は短縮しやすい


教材制作のなかで、AIによる変化が分かりやすいのは、文章の原案を作る工程です。

従来は、元資料の文章を教材用に書き換え、画面に表示する文とナレーションを分け、受講者に合わせて言葉を調整していました。説明が不足している箇所には補足を加え、長い文章は複数の画面へ分割します。


AIは、元資料から説明文やナレーションの原案を作り、指定した長さや表現へ調整できます。専門用語をかみ砕いた説明、初心者向けと経験者向けの表現の作り分けなども支援できます。


担当者は白紙から文章を書く代わりに、生成された原案を確認し、自社の表現や業務に合わせて修正します。文章を書く時間が、内容を選び、整える時間へ移ると考えると分かりやすいでしょう。


ここで注意したいのは、自然に読める文章と、正確な文章は同じではないという点です。AIが元資料にない説明を補っていたり、意味を簡略化する過程で条件が抜けたりする可能性があります。読みやすさだけでなく、元資料との整合性を確認する必要があります。



具体例と確認問題は、量産よりも目的との整合が重要になる


具体例や確認問題の作成にも、AIを活用できます。

従来は、説明内容をもとに問題文、選択肢、正解、解説を一つずつ作成していました。誤答の選択肢にも一定の妥当性が必要になるため、見た目以上に時間がかかる工程です。

AIを使えば、説明内容から複数の問題案を生成し、難易度や出題形式を変えることができます。具体的な業務場面を設定した事例の原案も作成できます。


問題数を増やすこと自体は容易になりますが、重要なのは、その問題で何を確認するのかです。用語を覚えたか確認したいのか、状況に応じた判断ができるか確認したいのかによって、適切な問題形式は変わります。


AIが作成した問題が、本文中の言葉を探せば答えられるだけの内容になっていることもあります。学習目標に沿っているか、正解が一つに定まるか、誤答の理由を説明できるかを人が確認します。


AIによって問題作成の原案は増やせますが、教育効果は問題数ではなく、学習目標との整合によって支えられます。



AIを使うと、レビューがなくなるのではなく、レビューの対象が変わる


従来の教材制作では、担当者が自分で文章を書きながら内容を理解していくため、制作と確認が一部重なっていました。


AIが原案を作る場合、文章を作成する時間は短くなります。その一方で、生成された内容の根拠、正確性、自社業務への適合性を確認する工程が、より明確に必要になります。

当社調査では、AIを教材制作へ活用する際の懸念として、「生成内容の正確性」が36.4%で最も多くなりました。この結果からも、AI活用では制作機能だけでなく、確認方法を含めた運用が求められていることが分かります。


元資料を管理する部門は情報の正確性を確認し、教育担当者は学習目標や構成を確認します。現場担当者は、業務で使える説明や事例になっているかを確認します。


AIが担う範囲を広げるほど、人は文章の細かな入力作業から離れ、判断と承認へ集中するようになります。制作時間の短縮を実現するには、このレビューの役割分担も同時に設計する必要があります。



教材更新では、変更箇所を探す時間を減らせる


AI活用の効果は、新規制作だけでなく、教材更新にも現れます。

従来は、元資料が更新されると、担当者が新旧の資料を比較し、変更された情報が教材のどこに使われているかを探していました。スライド、ナレーション、確認問題などに同じ情報が含まれていれば、それぞれを確認する必要があります。


AIは、新旧資料の差分を抽出し、変更内容を整理できます。元資料と教材の対応関係が記録されていれば、影響を受ける教材や修正候補を示すことにもつながります。

最終的な修正内容と公開の判断は人が担いますが、変更箇所を探し、確認範囲を特定する時間は短縮できる可能性があります。


当社調査で「教材の更新を効率化できる」への期待が最も多かった背景には、新規教材を作る負担だけでなく、作った教材を維持し続ける負担もあると考えられます。



AIで変わるのは、制作速度だけではない


従来の教材制作では、担当者の時間の多くが、資料の読み込み、転記、文章作成、形式調整などに使われていました。


AIを活用すると、情報抽出、構成案、説明文、ナレーション、具体例、確認問題などの原案を短時間で作成できます。その結果、人が使う時間の中心は、目的の設定、情報の選択、現場知識の補足、品質確認、承認へ移ります。


AIが短縮しやすいのは、一定の条件に基づいて情報を整理し、複数の原案へ展開する作業です。一方、何を教えるべきか、どの情報を信頼するか、自社の業務に適用できるか、公開してよいかという判断は、組織の責任として残ります。


そのため、AI導入の効果を教材の生成時間だけで評価すると、実際の改善範囲を見誤る可能性があります。制作からレビュー、配信、評価、更新までの全体で、どの作業が変わったかを見ることが大切です。


AIによる教材制作の価値は、短時間で多くの教材を作ることだけにあるのではありません。担当者が判断や改善に時間を使えるようになり、社内知識を継続的に教育へ反映できる状態を作ることにあります。




従業員教育と社内ノウハウの教材化に関する当社調査では、AI教材作成への期待と懸念、教材制作・更新に関する課題を詳しく紹介しています。


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